第107回
枯れ木も山の賑(にぎ)わい

 人から宴席などに誘われたとき、「枯れ木も山の賑わいと申します。ぜひおいでください」と言われたら皆さんはどう感じるであろうか。筆者なら、何と失礼な言い方をするのだと怒ってしまうであろう。あるいは、そうかこの人はぼくのことをそう見ていたのか、どうせ自分はもう若くないからな、とすっかりいじけてしまうかもしれない。
 ところが、そう言われても腹を立てたりいじけたりしない人が増えているらしいのだ。
 というのは、文化庁が発表した平成16(2004)年度の「国語に関する世論調査」では、「枯れ木も山の賑わい」を「人が集まればにぎやかになる」という意味で使う人が35.5パーセントいるという結果が出たからなのである。しかもこれは間違った使い方をしている人の数なのである。
 「枯れ木も山の賑わい」の本来の意味は「つまらないものでも、ないよりはまし」ということである。この調査では本来の意味で使う人が38.6パーセントで、両者の数はあまり違いがないという驚くべき結果が出てしまったわけである。地域によっては、間違った意味を回答した人の割合の方が多いところもあるようだ。
 勝手な想像だが間違った意味で使っている人は「賑わい」の部分ばかりに目がいって、「枯れ木」とあるのを見落としているのかもしれない。「枯れ木」とはもちろん枯れはてた木のことで、生気を失った樹木のことである。そんな木でも山に風情を添えるのに役立つというのが本来の意味なのである。
 自分の方から「枯れ木も山の賑わいと言うから出席しましょう」と使うのなら何ら問題はない。だが、相手に対して使うのは失礼な言い方となるので、使い方にはじゅうぶん気をつけたいことばである。

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