第109回
「愛想」の読みはサバイバルゲーム? 

 「あのお店の店員は愛想がよくていいね」などというときの「愛想」だが、この語を皆さんは「あいそ」「あいそう」どちらで読んでいるだろうか。筆者自身はというとその時々で揺れているような気がする。
 そして歴史的にも「愛想」の読みは揺れている語なのである。
 現在の国語辞典がどのように扱っているのかというと、大まかな傾向として「あいそ」を本項目として、その中で「あいそう」について触れるなど、「あいそ」のほうが優勢になりつつある。
 だが、明治期の辞書になると、たとえば幕末に出版されたヘボン編の和英辞典『和英語林集成』や、日本最初の近代的国語辞書『言海』(第1冊1899年刊)には「あいそう」の項目はあっても「あいそ」の項目はない。それが、明治20年代後半以降の辞書になると、「あいそ」の項目も参照項目として登場するようになる。
 だからといって、「あいそ」が新しい言い方かというとそうではなく、『日国』によれば、「あいそ」の例も「あいそう」の例もともに室町末頃から見られる。
 国語辞典の多くは「あいそ」は「あいそう」の音の変化などとしているものが多いのだが、そう決めつけるのにもいささか抵抗がある。『日国』の語誌欄でも述べているように、もともと「あいそ」という和語があり、それが「あいそう」と変化して漢語と意識されるようになったという可能性も否定できないからである。
 それが正しいとすれば、今日では「あいそ」が主流なので原点に戻ったということになる。まさに時代とともにその読み方がサバイバルゲームを繰り広げているようではないか。
 

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