第115回
「愛想」を振りまくことができるか?

 第109回で「愛想」の読みについて「あいそ」か「あいそう」かということを書いた。だが、この語にはもうひとつ、ぜひ触れておかなければならない問題がある。というのは、その使い方に関して「愛嬌」との混同が見られるからなのである。
 文化庁が2005年(平成17年)度に行った「国語に関する世論調査」によると、「愛想」を「愛嬌」と混同した、「愛想を振りまく」を使う人が増えているというのである。もちろん本来の言い方は「愛嬌を振りまく」である。この調査によれば、「愛嬌を振りまく」を使う人が43.9パーセント、「愛想を振りまく」を使う人が48.3パーセントと、何と逆転した結果が出てしまったのである。
 「愛想」と「愛嬌」は確かに似ているが、本来はまったく違う意味のことばである。
 「愛想」は、「愛想がいい」「愛想笑い」などのように、人によい感じを与えるために示す態度やもの言いのことであり、「愛嬌」は、「愛嬌のある顔」「愛嬌たっぷり」などのように、見る人に、かわいらしさ、ひょうきんで憎めないようすなどを感じさせる要素や仕草などを表す語である。あえて違いをいうなら、「愛想」は具体的な動作であり、「愛嬌」はその人の持つ印象や雰囲気ということができようか。
 つまり、雰囲気は振りまくことができても、実際の動作は振りまくことができないということになるであろう。
 「愛想を振りまく」と言う人が増えていることもあって、まだ少数派ながらそれを例として挙げている国語辞典も出始めている。ただ筆者が確認した限り、いずれも特に「元来は間違った用法だった」などという注記は見あたらない。「愛想を振りまく」を辞典に載せるのであれば、まだこの言い方に対して違和感を覚える人も多いであろうから、ひと言但し書きを付け加える必要があるのではないだろうか。

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