第120回
「ぎこちない」か「ぎごちない」か ?

 このコラムでは読みがなかなか安定しない語を再三取り上げているのだが、「ぎこちない」「ぎごちない」もそのひとつである。2音節目を「ご」と言うか「こ」と言うかという問題なのだが、平成になってもまだ決着をみないようだ。
 今皆さんはどちらを使っているだろうか。おそらく「ぎこちない」派が多いのではないか。だが、平成4年(1992)に刊行された、NHKアナウンサーのことばの拠り所である『NHKことばのハンドブック』を見ると、「ぎごちない」が第1の読みなのである。第2の読みとして「ぎこちない」も掲げているところを見ると、NHKは「ぎこちない」の存在は認めつつも「ぎごちない」が好ましいと考えていたことがわかる。国語辞典はどうかというと、当時のものは「ぎごちない」派、「ぎこちない」派まちまちであった。
 ところが、平成17年(2005)に刊行された『NHKことばのハンドブック』の第2版では「ぎこちない」が第1の読み、「ぎごちない」が第2の読みと逆転してしまった。わずか10数年の間に「ぎこちない」派が優勢だと判断されたわけである。
 最近の国語辞典も「ぎこちない」を見出し語として、「ぎごちない」を解説の中で触れるだけのものが増えてきている。
 「ぎこちない(ぎごちない)」の語源は、無愛想で荒っぽいという意味で使われた「ぎこつない(ぎごつない)」の変化した語だと言われている。だが、そもそもこの「ぎこつ(ぎごつ)」の語源もよくわかっていないのだ。しかもこちらも「こ」か「ご」かで揺れているのである。
 現在は「ぎこちない」が多数派だが、これで決着がついたと言えるかどうか、まだまだ予断を許さない状況である。

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