第132回
寸暇を“惜しまず”勉強できるか?

 わずかな時間も無駄にせずに勉強に励むことを皆さんは何と言っているだろうか。「寸暇を惜しんで勉強する」だろうか。それとも「寸暇を惜しまず勉強する」だろうか。
 文化庁が発表した平成22(2010)年度の「国語に関する世論調査」によると、「寸暇を惜しんで」を使う人が28.1パーセント、「寸暇を惜しまず」を使う人が57.2パーセントという結果が出た。
 「寸暇を惜しまず」の方が圧倒的に多いのだが、実は「寸暇を惜しんで」が本来の言い方で、「寸暇を惜しまず」は従来なかった言い方なのである。
 「寸暇」とは、少しのひまのことで、「寸暇を惜しんで」とはそのわずかな時間すら惜しんで物事に取り組むという意味である。「寸暇を惜しまず」だとわずかなひまを惜しまないということなので、無駄な時間を過ごすという意味にもなってしまう。
 なぜこのような従来なかった言い方が生まれたのかというと、苦労をいとわないという意味の類似の慣用表現「骨身を惜しまず」との混交によるのではなかろうか。
 だが、この文化庁調査でかなり浸透していることが判明した「寸暇を惜しまず」を国語辞典としてはどう扱うべきなのであろうか。すでに「寸暇を惜しまずという言い方もされる」として、その用法を認めている辞典も出始めている(『明鏡国語辞典 第2版』)。
 だが、「寸暇を惜しまず」を「寸暇を惜しんで」と同じ意味だと言うことは無理な話なので、やはり誤用だと言わざるを得ない。

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