第14回
文月(ふみづき)

 陰暦7月の異称で、「ふづき」ともいう。陰暦では7月から秋である。
 7月をなぜ「文月」というのか、実はよくわかっていない。「水無月」(第10回)でも引用した平安時代後期の和歌の研究書『奥義抄』には、「七夕に書物を供える意からフミヒラキヅキの誤り」とする説が見える。他に、稲の穂のフフミヅキ(含月)の意とする説(賀茂真淵『語意考』1769年)、七月に書物の虫ぼしをするところからとする説(貝原好古『和爾雅(わじが)』1688年)、墓参の習慣のある月という意からフヅキ(親月)の意とする説(行誉『壒囊鈔(あいのうしょう)』1445‐46年)、秋風の立つ月の意でフミ(風微)月の義(本寂『和語私臆鈔』1789年)などさまざまである。
 松尾芭蕉が越後の直江津で詠んだ句に「文月や六日も常の夜には似ず」がある(『奥の細道』)。この月は別名「七夕月(たなばたづき)」とも言い、7日には七夕祭りが行われる。芭蕉の句はそのことを念頭に置けば、句意はたやすく理解できるであろう。七夕前夜の直江津の町の浮き立った様子が詠まれているのである。
 ちなみに七夕の日は旅に随行した弟子の曽良(そら)によればあいにくの天気で、「風雨甚(はなはだ)」しかったという(『曽良旅日記』)。

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