第144回
「すいぞっかん」は大阪のおっちゃんだけ?

 大晦日の夜は、お酒をちびりちびりやりながらテレビ漬けになるのが慣例になっている。昨年もチャンネルをいろいろ変えながらそうしていたところ、お笑いコンビのダウンタウンの2人が、何やら力の抜けたいい雰囲気で会話をしている場面に出くわした(日本テレビ系列「ダウンダウンのガキの使いやあらへんで!!」)。
 会話の内容は正確ではないかもしれないが、以下のようであった。松本さんが、「パンツを洗う機械って何て言う?」という質問をしたところ、相方の浜田さんは「せんたっき」と答えた。さらに、「魚がいっぱい泳いでいるのをガラスの向こうから見るところを何と言う?」という質問には、浜田さんは「すいぞっかん」という答え。それを聞いた松本さんが、お前のそういうとこ嫌やねん、大阪のおっさんみたいで、気色の悪い、とツッコミを入れていた。
 だが、“大阪のおっさん”ではない筆者も、浜田さんと同じように、「せんたっき」「すいぞっかん」と言っているのである。もちろん「洗濯機」「水族館」の正しい読みは、「せんたくき」「すいぞくかん」で、国語辞典の見出し語もすべてその語形で表示されていて、「せんたっき」「すいぞっかん」で引ける辞典はひとつもない。
 ところが、日常語の標準的なアクセントと発音を示し、NHKアナウンサーのアクセントや発音の指標ともなっている『NHK 日本語発音アクセント辞典』には、「せんたっき」は無いのだが、「すいぞっかん」の方は「すいぞくかん」と併記されているのである。つまり、「すいぞっかん」は標準的な発音であるとNHKも認めているというわけである。これは、NHKのアクセント辞典と並んで定評のある『新明解アクセント辞典』も同様である。
 どちらの辞典も、「すいぞっかん」を認めて「せんたっき」は認めない理由は不明だが、たとえば「濯(タク)」「族(ゾク)」のような二拍目が「ク」となる漢字は、そのあとに「K」の音で始まる漢字が続くと促音化、すなわち、小文字の「ッ」で表記される発音になることがある。「学校」を「ガッコウ」と発音するのもそれである。もちろんすべてそのようになるというわけではなく、また、促音化は二拍目が「ク」となる漢字以外でも起こるのだが、「すいぞっかん」「せんたっき」はどちらもそれに当てはまる。
 上記のアクセント辞典で示された発音は共通語の発音で、共通語=東京語ではないのだが、だからといって大阪語だというわけではない。松本さんが抱いている「大阪のおっさん」のイメージはよくわからないが、「すいぞっかん」「せんたっき」と言っているのは、浜田さんや「大阪のおっさん」だけでないことだけは確かである。

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