第152回
「うがった見方」ってどんな見方?

 人と話をしているときに自分の意見を述べようとして、「うがった見方をするとね」などと切り出すことはないだろうか。あるいは、相手の意見に対して、「それは少しうがちすぎた見方だね」などと言うことはないであろうか。
 だが、このような言い方は「うがった見方をする」の本来的な意味によった使い方ではない。では何が本来の意味かというと、「物事の本質をうまく的確に言い表す」(『大辞泉』)ということなのである。
 ところが、文化庁が発表した2011(平成23)年度の「国語に関する世論調査」では、本来の意味で使う人が26.4パーセント、本来無かった意味「疑って掛かるような見方をする」で使う人が48.2パーセントという逆転した結果が出てしまった。
 この逆転現象の背景には、「うがった」ということば自体を知らない人が増えているということがあるのかもしれない。「うがった」は「うがつ」という動詞で、漢字を当てれば「穿つ」である。そもそもこの漢字自体、けっこう難読語だと思う。「雨だれ(点滴)石をうがつ」の「うがつ」であると言えば、ああそうだったのかとお思いになる方もいらっしゃるであろう。「うがつ」は穴を開けるというのが本来の意味であるが、それが転じて、人情の機微に巧みに触れる、物事の本質をうまく的確に言い表すという意味になった。つまり、「うがった見方」はプラス評価として使われる語であり、相手の意見をプラスに評価して「うがった見方だね」などと言うのは正しいが、自分の意見を述べたり相手の意見を批判したりするときに使うのは本来的な言い方ではないことになる。
 しかし、原則はそうなのだが、文化庁の調査にもあるように「疑って掛かるような見方をする」の意味だと思っている人が増えているために、少数派ではあるが新しい意味を認めている辞典も出始めている。中でも保守派と目されている『岩波国語辞典』が「うがちすぎの見方」という言い方を認めているのは興味深い。
 この「うがつ」もまた、辞書編集者を悩ませることばになりそうな気がする。

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