第170回
横書き文の読点は「、」か「,」か?

 先ずは問題である。次の2つの文章の違いがおわかりだろうか。
 憲法とは、国家の統治体制の基礎を定める根本法である。
 憲法とは,国家の統治体制の基礎を定める根本法である。
 なあんだ、と思いになった方も大勢いらっしゃると思う。違いは、「憲法とは」のあとにくる記号が「、」か「,」かということだけなのだから。
 だが、皆さんは横書きの文章を書いたとき、読点は何を使うべきなのか悩むことはないだろうか。実は先日、他社発行の専門辞典の原稿を書く機会があったのだが、その辞典は横書きで、原稿の執筆要領には、句読点はカンマ「,」と丸「。」を使うようにと書かれていた。その辞典が縦書きだったら、おそらく執筆要領で句読点について触れることは無かったであろう。だが、わざわざそう書くということは、正式な横書きでは読点が「,」なんだろうかと気になった。と言うのも、このコラムは横書きだが「、」と「。」を使っているからである。
 「,」はカンマ、コンマと呼ばれ欧文に使われる符号で、従来の日本語文にはなかったものである。また、欧文で句点に当たる符号は「.」で、こちらはピリオドと呼ばれる。
 だとすると横書きの日本語文の場合、句読点(くぎり符号)は以下の組み合わせが考えられる。
 (1)「、」と「。」
 (2)「,」と「。」
 (3)「,」と「.」
 (4)「、」と「.」
以上のうち、(4)の組み合わせは少ないかもしれない。
 どのパターンが最も支持されているのかよくわからないが、調べてみると横書き文の句読点(くぎり符号)の使い方についてはきまりのようなものが存在していたのである。それは、1951年10月30日付けで国語審議会から建議され、翌年内閣官房長官から各省庁事務次官あて依命通知された「公用文作成の要領(公用文改善の趣旨徹底について)」である。そこに「句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる。」と記載されている。つまり横書き公用文では上の(2)の「,」と「。」という組み合わせに統一しようとしたわけである。
 ただし、この「公用文作成の要領」は拘束力のあるものではなさそうだ。そのため新聞の記事も(1)「、」と「。」にしているものが多い。
 結論から言えばどの組み合わせでも間違いではなさそうなので、このコラムは従来通り(1)「、」と「。」で続けたいと思っている。

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