第175回
「ざっくり」の新しい意味

 先ずは以下の文章をお読みいただきたい。筆者が編集を担当した『現代国語例解辞典 第4版』(2006年刊)に立項されている、「ざっくり」という語の語釈(解説)部分である。
 (1)力を込めて物を切ったり、割ったりするさま。
 (2)深くえぐれたり、大きく割れたりするさま。
 (3)布地などの手ざわりや目などの粗いさまをいう語。
 いかがであろうか。これを読んで、あれ、あの意味が足りないのではないかと思った方もいらっしゃるかもしれない。おそらくその方は、「今日のところはざっくりとしたところだけでも決めておこう」「論文の要旨をざっくりととらえる」などという文章を思い浮かべたものと思われる。そう、この辞典には「ざっくり」の、大ざっぱなさまや、全体を大きくとらえるさまという意味はないのである。
 だが逆にここまで読んで、「えっ、『ざっくり』にそんな意味はないでしょ」、と思った方も少なからずいらっしゃるに違いない。
 実は、この大ざっぱという意味の「ざっくり」は、最近見かけるようになった言い方なのである。従って、2006年発行の『現代国語例解辞典 第4版』の編纂時にはまだあまり一般化していなかったために、掲載を見送ったわけである。新語をいち早く収録することで有名な『三省堂国語辞典』も、この意味を載せるようになったのは第6版(2008年)からである。
 なぜ、「ざっくり」に大ざっぱ、大まかという意味が生まれたのか、詳しいことはよくわからないのだが、「ざっくりしたセーター」などのように、元来あった「布地などの手ざわりや目などの粗いさまをいう語」という意味からの類推なのかもしれない。
 国語辞典の扱いは現時点ではまちまちなのだが、もし辞書に載せるとしても、俗語という表示は必要だと思われる。

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