日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。

第181回
「右回り」と「左回り」

 第179回で「右開き」「左開き」について書いたが、「右回り」「左回り」もどちらの方向に回転するのか迷う人が多いことばかもしれない。
 「右回り」は、アナログ時計の針と同じ方向に回る回り方であり、「左回り」はアナログ時計と反対方向に回る回り方である。そのようなことから、「右回り」を「時計回り」、「左回り」を「反時計回り」ということもある
 アナログ時計がなぜ「右回り」になったのかというと、日時計がそうであったからである。日時計は、固定した指針に太陽の光が当たってできる影の位置によって時刻を知るものだが、太陽は東から西に移動するので、できる影は西側から東側への移動、つまり「右回り」の移動となる。最近はデジタル表示の時計も増えているが、腕時計はアナログ表示のものが多いので、それを思い浮かべれば「右回り」と「左回り」の向きを間違えることはないであろう。
 時計が「右回り」なので、ほとんどが「右回り」かというとそうでもない。トランプゲームは「反時計回り」つまり「左回り」である。陸上のトラック競技も、スケートのスピードスケートも自転車競技もすべて「左回り」で行われる。
 ところが競馬は競馬場そのものが「右回り」のものと「左回り」のものが存在する。筆者は右利きなのでそう感じるのかもしれないが、「左回り」の方が楽に走れそうである。馬には「右回り」が得意な馬とか、「左回り」得意な馬とかいうことはないのであろうか。

キーワード: