第187回
「気が置けない」はこのままでいいのか!

 文化庁が毎年発表している「国語に関する世論調査」には、一定の期間をおいて使用状況の追跡調査を行っていることばがあるようだ。
 平成24(2012)年度の調査にあった「気が置けない」もそんなことばの一つで、平成14年度、平成18年度と、かなり頻繁に調査が行われている。繰り返し調査を行うのは、「気が置けない」は「相手に気配りや遠慮をしなくてよい」が本来の意味であるにもかかわらず、従来なかった「相手に気配りや遠慮をしなくてはならない」という意味が広まっていることで有名なことばだからであろう。
 だが、この「気が置けない」は数年おきの調査でも、本来の意味を選択した人が、平成14年44.6%、平成18年42.4%、そして今回の平成24年が42.7%とほとんど変化していないのである。そして今回の調査はというと、「相手に気配りや遠慮をしなくてはならない」を選んだ人が各世代にわたって多く見られ、特に、10代と30代で顕著であった。これほどマスコミなどでも誤った言い方の代表であると紹介されることが多いことばであるにも関わらず、ほとんど変化がないというのはどうしたことなのであろうか。
 ことばの使い方を扱ったクイズ番組はけっこうあり、その中でこの「気が置けない」も問題として出題されることが多いと思う。だが、テレビを見ている人は「へーそうなんだ」と思っただけで終わってしまうのだろうか。その場で自分はどういう意味で使っていたかという確認まではしないのであろうか。
 文化庁が行っているこのような調査は確かに重要であると思う。だが、ただ結果を知るだけでいいのだろかという気がしないでもない。
 とかく若者はことばが乱れていると言われることが多いのだが、この「気が置けない」と同じように各世代にわたって従来なかった意味が広まっていることばは数多く存在する。単にことばは変化するものであると割り切ってしまうのではなく、日本語の将来をどうするべきなのか、そろそろ考えるべき時期なのではないかと思うのである。

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