第208回
「潮時(しおどき)」とはどういうとき?

 「潮時」とは、元来は海の潮が満ちるときや、引くときをいう。
 「ソーラン節」の中に、
 沖の鷗に 潮(しお)どき問えば
 わたしゃ立つ鳥 波に聞け チョイ
と出てくる、あの「潮時」である。
 これが転じて、ものごとを行ったりやめたりするのに適当な時期といった意味になる。
 「話しかける潮時をうかがう」とか、「そろそろ引退の潮時かもしれない」などと使う。つまり「潮時」とは、ある流れの中で次第に何かを行うのにちょうど良い時期になるといった意味で、「好機」に近いと言ってもいいかもしれない。
 ところが、この「潮時」を「好機」の意味ではなく、「ものごとの終わり」という意味だと考えている人が増えているようなのである。文化庁が発表した2012(平成24)年度の「国語に関する世論調査」でも、本来の意味である「ちょうどいい時期」で使う人が60.0パーセント、従来なかった「ものごとの終わり」で使う人が36.1パーセントという結果が出ている。
 しかもこの調査結果にはもうひとつとても気になる点がある。従来の意味で使っているという人が、10歳代と60歳以上では6割を超えているのに対して、20歳代から50歳代までは、従来の意味で使うという人は5割を少し上回る程度で、逆に「ものごとの終わり」という従来なかった意味で使うという人が、4割以上と増加しているのである。いったい、この世代に何があったのであろうか。語彙を獲得する時期に共通する何かが起こっていたのであろうか。
 だが、今となってはその原因を追求することはあまり意味がない。むしろ、これからの日本語を担う10歳代の若者たちが、「潮時」を本来の意味のままで使い続けてくれるように仕向けていくことのほうが大切だと思うのである。

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