第206回
「物差し」を「線引き」と言うのはどこの地方か?

 すでに700万人もの方が挑戦しているというサイト「方言チャート」をご存じだろうか。東京女子大学の篠崎晃一教授のゼミ生が篠崎教授の指導のもと、各地の方言のデータを集め、チャート形式で出身県を当てるというものである。この「方言チャート」が、最近リニューアルした。700万人分の結果を精査して、的中率をさらに上げるようにしたのである。
 このサイトの作成には筆者もいささか関わりがあるのだが、出身県(千葉県)がぴたりと当たったときには、さすがにうれしかった。
 実際に挑戦してみると、この方言を使うか使わないかで、次第に自分の出身県が絞られていくのが何となくわかるところがおもしろい。筆者の場合、千葉県に次第に近づいていく重要な分岐点が、物差しの写真が示されていて「この写真の文具を『線引き』ということがありますか?」という質問であるような気がしている。
 筆者は間違いなくそれを「線引き」と言うのだが、そんな言い方などしたことがないという方も大勢いらっしゃることであろう。篠崎教授と毎日新聞社が共同で調査した『出身地(イナカ)がわかる方言』(幻冬舎文庫)によれば、「線引き」は静岡県で使われているという。もともと静岡県だけで使われていた語かどうかはわからないが、関東にもかなり広まっているようで、「方言チャート」ではこの質問によって関東の出身であると絞られていくような気がする。実際に筆者の知る限り唯一この意味の「線引き」を載せている『三省堂国語辞典第7版』でも、「もと、東京・神奈川・静岡などの方言」と解説している。
 ちなみに「物差し」を「線引き」と言っているのは限られた地域だけかもしれないが、同じような意味で使われることばに「定規」があり、「物差し」「定規」は同じような意味で使われることも多い。だが、「物差し」は物の長さを測る用具で、長さの単位の目盛りがつけてあるのに対して、「定規」は 物を裁断したり、線を引いたりするのにあてがって使う器具で、長さの単位の目盛りがついていないものが多いという点で異なる。
 話が横道にそれてしまったが、「方言チャート」は、どのような方言によって出身地域が絞られていくのかを考えながら挑戦していくと新しい発見があって楽しい。まだの方はもちろんこと、一度おやりになった方も、そんなことを考えながら再度挑戦していただきたいと思う。

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