第215回
「たわいない」と「たあいない」

 「たわ(あ)いなく眠りこける」「たわ(あ)ない話はよせ」などというとき、皆さんは「たわいない」「たあいない」のどちらで言っているであろうか。筆者はどうかというと、そのときの気分でどちらも使っているような気がする。
 「たわ(あ)いない」は、比較的意味に広がりのある語で、国語辞典ではふつう以下の3つの意味に分けて説明している。

(1)「ビールを一杯飲んだら、たわ(あ)いなく寝入ってしまった」のように、酒に酔ったり、寝入ったりして正体がないという意。
(2)「子どものようにたわ(あ)いない人ですぐにだまされる」のように、幼くて思慮分別がない、あるいは、ごまかしたり言いくるめたりするのが簡単であるという意。
(3)「テニスの試合で、たわ(あ)いなく負ける」のように、手ごたえがない、張り合いがないという意。

 『日本国語大辞典 第2版』によれば、これらの意味の用例はすべて江戸時代から見られ、また、「たわいない」「たあいない」ともに江戸時代の用例が最も古いことから、すでにそのころから両形があったと推定される。
 だが、どちらが先に生まれたかと言うことになると、語源のはっきりしない語であるため推察のしようがない。「他愛ない」と書かれることもあるが、これは当て字なのである。
 ただ、現在では「たわいない」の方が一般的であると考えられていて、辞書も「たわいない」「たあいない」ともに見出し語としているものの、「たあいない」は参考項目扱いで、「たわいない」を本項目としているものがほとんどである。

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