第23回
長月(ながつき)

 陰暦9月を「長月」というが、語源は明らかでない。ただ平安時代から今でもそのようにいわれることの多い語源説のひとつ、夜がだんだん長くなる月の意の「夜長月」の略称だという説があった(『奥義抄』)。
 ほかにも、「稲熟月(いなあがりつき)」「稲刈月(いなかりづき)」「穂長月(ほながづき)」などの変化したものとする説もある。
 国文学者の折口信夫(おりくちしのぶ)は、9月は5月同様長雨の時季で、「ながめ」と称する物忌(ものいみ)の月だとした。平安時代には、9月は婚姻や洗髪を忌む月とされていたらしい。
 この月は菊の花の盛りにあたるため別名「菊月」ともいう。特に9月9日は「菊の節句」とも「重陽(ちょうよう)の節句」とも呼ばれる。「重陽」とは、陰陽説で奇数を陽、偶数を陰と考え、陽の数つまり奇数の一番大きな数となる9が日月で重なる佳日という意味である。この日には古くから「菊酒」を飲む習俗があった。「菊酒」とは菊で造った酒ではなく、菊の花を浮かべた酒である。
 現在ではこの日を特に祝うことは、全国的にみてもまれになってしまった。ただ、九州北部などではしっかりとこの習俗が残っている。有名な秋祭り「長崎くんち」「唐津くんち」がそれで、「くんち」とはこの「九日」つまり「くにち」に由来するといわれている。

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