第254回
「総花」

 たとえば講演会の最後に、講師が「今回は総花的なお話になってしまいましたが、次回からはもう少し詳しくご紹介していきたいと思っています」と言ったとする。みなさんは、この「総花的」の使い方をどのように感じるだろうか。
 この発言者はおそらく、内容が羅列的で話があちこちしているため、メリハリのない話になってしまったと言いたかったのだと思う。だが、この「総花的」の使い方は本来の意味のものではないのである。
 ところで、本論に入る前に「総花」の読みについて確認しておこうと思う。漢字自体はそれほど難しくはないのだが、読み方に迷う方がけっこういると聞いたからである。「総花」は「そうばな」と読むのが正しい。
 さて、「総花」の本来の意味についてである。元来は料亭、遊女屋などで、客が使用人など全員に出す祝儀のことを「総花」と言っていたのである。「総花」の「花」は祝儀のこと。そこから、すべての関係者を満遍なく立ててやること、あるいは皆に恩恵を与えることという意味になったのである。
 たとえば『日本国語大辞典』には大正時代の新語辞典『現代大辞典』(1922年)の「総花(ソウバナ) 人気取り政略を云ふ」という例を引用している。つまり「総花的な予算案」とか、「総花的な提言」などという言い方をお聞きになったことがあると思うが、それらは皆に恩恵を与えることを意図したという意味で使われており、「人気取り政略」という解説はかなり的を射ているのである。
 しかし、最近このような羅列的な状態を総花的ということがかなり広まっているようで、インターネットで検索してもそうした使用例がかなり見つかる。
 そのため、国語辞典の中にはこの新しい意味を載せるものが出始めている。ただし、それらのほとんどは、単に新しい意味を追加しているだけなのである。辞典に新しい意味を積極的に載せることはいいとしても、「総花」の場合、何の注記も無しに新しい意味を載せることにはまだ抵抗がある。

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