日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。

第33回
最初に生まれた孫はハツマゴ、ウイマゴどっち?

 漢字の「初」は、「はつ」とも「うい」とも読む。「初詣」は「はつ」、「初陣」は「うい」である。どちらも、「最初の」という意味で使われる。あえて違いを述べるなら、「はつ」の場合は、その年はじめてのという意で用いられることが多いという点だろうか。もちろん「初耳」のように例外もあるのだが。いずれにしても、「初詣」「初雪」「初陣」「初々しい」のように、「うい」なのか「はつ」なのか迷うことはほとんどないと思われる。
 ところが「初孫」だけは、「うい」なのか「はつ」なのか、どうもハッキリしないのである。辞書などでは「ういまご」を伝統的な読み方としているものもあり、実際『日国』を見ても、「ういまご」の用例の方がやや古い。そのためか、「はつまご」と読むと教養がないと決めつける人もいるようだ。
だが、そのような人に出会うと、以下のような例を見せたくなる。藤原道長・頼通父子の栄華を中心に描いた平安時代の歴史物語『栄花物語』の用例である。
 「東宮の生れ給へりしを、殿の御前の御はつむまごにて」
 「東宮」は皇太子、「殿の御前」は道長のこと。「うい」ではなく「はつむまご」(「むまご」は「まご」の古い形)の例がすでに平安時代にもあったのだ。
 テレビ・ラジオではどちらの読みも認めているが、それが妥当な扱いだと思う。

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