第367回
「革命」は辞典によって扱いが異なる

 「革命」ということばを聞くと、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。歴史的な「フランス革命」「ロシア革命」などであろうか。あるいは、社会の特定の領域で起こる「産業革命」「宗教革命」などであろうか。人によってさまざまであろう。
 だが、この場で論じたいのは「革命」とは何かということではない。「革命」ということばそのものについてである。
 国語辞典で「革命」という語を引いてみると、一様ではないことがわかる。
 「革命」の「革」はあらたまるという意味だが、古代中国では、天子は天命を受けて天下を治めるので、王朝が交替するのはその天命があらたまったからとされていた。このことから、もともとは王朝が変わることを「革命」といったのである。
 日本でも幕末頃までは、「革命」はこの意味に基づいて用いられてきた。ところが、明治以後revolution の訳語として「革命」が用いられるようになり、現在のような、被支配階級が時の支配階級を倒し、政治権力を握り、社会を変革することをいうようになったのである。
 『日本国語大辞典(日国)』によれば、revolutionの訳語として「革命」を選んだのは福沢諭吉だと考えられているのだが、この語を世に広めたのは中江兆民ら、自由党系列の自由民権運動家たちであったらしい(「革命」の語誌)。
 つまり、本来の「革命」と明治以降の「革命」とは全く別の語で、従来あったことばが流用されただけだということがわかる。
 この「革命」という語の扱い方が、辞典によって違うのである。主な辞典の扱いを整理すると以下のようになる。

【最初に王朝交替の「革命」を示している辞典】
『日国』『広辞苑』『現代国語例解辞典』『岩波国語辞典』

【最初は現在の革命の意味を示していて、王朝交替の意味はその後にしている辞典】
『大辞泉』『大辞林』

【王朝交替については、補注あるいは補説として述べている辞典】
『三省堂国語辞典』『新明解国語辞典』『明鏡国語辞典』

 現在では、「革命」の意味は、狭義の政治的な意味にとどまらず、日常生活でもすべてのものの状態、作用に、突然根本的な変化が現れることにも使われるようになり、「流通革命」「レジャー革命」などといった使われ方もされるようになっている。まさにことばの拡散化と言えるであろう。
 それはそれで何ら問題はないのだが、やはり「革命」という語の本来の意味を知っていても、損にはならないような気がする。
 なお蛇足ではあるが、今年の夏に安倍政権が新たな政策として「人づくり革命」ということを掲げた。その命名のセンスについて何か言いたいということではないのだが、マスコミ数社がこの「革命」ということばの使い方について日本共産党に意見を求めた記事があったことに違和感を覚えた。「革命」ということばは、マルクス・レーニン主義の専売特許ではないからである。

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