第4回
曲(話)の"さわり"とはどこのことか?

 「その曲のさわりを歌ってみて」と言われたとき、みなさんは曲のどの部分を口ずさむであろうか。
文化庁が発表した平成19(2007)年度「国語に関する世論調査」では、「話のさわりだけ聞かせる」という例文に対して、「話などの要点のこと」の意味で使う人が35.1%、「話などの最初の部分のこと」の意味で使う人が55.0%という結果が報告されている。
 実は、この「さわり」とは、元来は義太夫一曲の中で、いちばんの聞かせどころ、あるいは、聞きどころとされている個所のことが転じて、一般に話や曲などの最も情感に富み、感動的な部分を言うようになったのである。歌謡曲だったら「サビ」と呼ばれる部分にあたる。つまり「最初の部分」というのは誤りなのである。
 しかし、現在では間違った意味で使う人の方が半数を超えてしまい、逆転現象が起きてしまった。辞典の立場としては、あくまでも「最初の部分」は誤用である旨を指摘し続けなければならず、悩ましい問題なのだ(実はこの「悩ましい」も問題の多い語で、それについては次回に)。

キーワード:

さらに悩ましい国語辞典
―辞書編集者を惑わす日本語の不思議!―

日本最大の辞書『日本国語大辞典』の編集者はまだまだ悩んでいる! 辞書で定義しずらい言葉の悩み辞書にした「悩ましい国語辞典」の第2弾。
そんたく【忖度】[名]「忖」も「度」もはかるという意味。他人の心を推し量ることで「なにか配慮をする」の意味はない。/しんしゃく【斟酌】配慮までする意味なら「忖度」でなく、「斟酌」の方がしっくりする。この語「手加減する」と意味は変化し続け、今、忖度で起きている現象が斟酌でも起きている……

悩ましい国語辞典
―辞書編集者だけが知っていることばの深層―

「日本国語大辞典」の編集担当者を惑わすことばの不思議スリリングに揺れる日本語の深さ! 面白さ満載!
「うがった見方」は「疑ってかかるような見方」ではない/「悲喜こもごも」を合格発表の描写で使うのは誤り/「まじ! 」は、江戸時代の小説に使用例がある/スコップとシャベルはどちらが大きいか?西日本と東日本では違う/「谷」を「や」と呼ぶのは音読みでも訓読みでもない方言/「あばよ」の語源は幼児語の「アバアバ」

ジャパンナレッジとは

ジャパンナレッジは約1500冊以上(総額550万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。

ジャパンナレッジ Personal についてもっと詳しく見る