第48回
熱に「浮かされる」?「うなされる」?

 高熱のためにうわごとを言うような状態になることを、「熱に浮かされる」というのだが、このことばにはもうひとつ、一つのことに熱中して前後を忘れる、ほかを忘れて夢中になるという意味もある。
 ところが最近、後者の意味のとき「熱にうなされる」という言い方をする人が増えているという話を聞いた。
 実際、文化庁が発表した平成18(2006)年度の「国語に関する世論調査」では、「熱に浮かされる」を使う人が35.6パーセント、「熱にうなされる」を使う人が48.3パーセントという結果が出ている。
 驚いたことに、間違った言い方の「熱にうなされる」を使う人のほうが多いという調査結果なのである。
 「うかされる」は動詞「うかす(浮)」の未然形に、受身の助動詞「れる」が付いて一語化したもので、ものに心を奪われて夢中になるという意味を表す。「熱に浮かされていて親の忠告など耳に入らない」のような使い方をする。
 「うなされる」は、恐ろしい夢を見るなどして、思わず苦しそうな声をたてるという意味である。確かに高熱が出れば「うなされ」はするだろうが、夢中になるという意味にはどうあってもなりそうにない。
 「うかされる」「うなされる」は「か」と「な」の違いではあるが、その意味するところはまったく違うのである。
 意味を考えずに、音だけでことばを覚えて使っている人がいかに多いかということがよくわかる事例である。

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