日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。

第49回
「辞書引き学習」のすすめ

 「辞書引き学習」をご存じだろうか。
 今、小学生の間で静かに広まっている辞書を使った新しい学習法である。「辞書引き学習」は知らなくても、付せんをたくさん貼って、葉の開いた白菜のようになった辞典をご覧になった方は大勢いらっしゃると思う。あれこそが、「辞書引き学習」の成果なのである。
 「辞書引き学習」は中京大学の深谷圭助准教授が、今から10数年前に愛知県内の小学校の教員だったときに提唱した学習法で、その学習法の目指すところは、子どもたちに自ら学ぶ力を付けさせるところにある。
 宣伝めいて恐縮だが、昨秋『例解学習国語辞典』(くわしくはこちら→ http://family.shogakukan.co.jp/kids/jisho/ )という小学生向けの国語辞典の改訂版(第9版)を刊行した。深谷先生にはこの辞典の新編集委員に加わっていいただいたのだが、発売後各地で「辞書引き学習」を広める講演をしていただいている。講演会では実際に子どもたちに辞書引きを体験してもらっているのだが、これが傍で見ていて実に面白い。今までほとんど辞書に触れたことのない子どもたちが、先生の指導で目の色を変えて辞書を引き始めるのだ。
 さらに、子どもたちが引いた項目を見せてもらうのも楽しい。子どもたちには自分たちが知っていることばを引かせるので、その子のボキャブラリーの範囲がわかるのである。
 「辞書引き学習」のメリットは、今まで意味を曖昧に覚えていた語の確認もできるという点にもある。
 「辞書引き学習」を子どもだけにやらせておくのはもったいないと思う。

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