第55回
滋賀で「うみ」といえば

 4月の始めに仕事で京都に行った折りに、今年のNHKの大河ドラマ「江」の舞台で話題の滋賀に立ち寄った。かつては近江と呼ばれた滋賀は、「江」の時代には、中央にどんと構える湖琵琶湖の東岸に沿って、人々が慌ただしく往(い)き来していたような印象がある。
 その湖、琵琶湖だが、県域の約6分の1をしめていて、県内のどこにいてもその存在が意識される。以前、滋賀出身の朝日放送の名物プロデューサー松本修氏から、滋賀で「うみ」と言えば「琵琶湖」のことで、それこそが滋賀の大切なお国ことばでもあるという話を聞いたことがある。第三高等学校(現京都大学)のボート部員だった小口太郎が作詞した『琵琶湖周航の歌』の出だしもまさに「われは湖の子」で、「湖」は「うみ」であった。
 大きな沼や湖を「うみ」と呼ぶのはかなり古く、『古事記』や『万葉集』にも用例が見える。
 また、「うみ」で特に琵琶湖を表すことも同様で、柿本人麻呂に、
 「淡海乃海(あふみのうみ)夕波千鳥汝(な)が鳴けば情(こころ)もしのに古(いにしへ)思ほゆ」(『万葉集』3・266)
という歌もある。
 滋賀の旧国名「近江」は大化改新の時に設けられたのだが、「淡水のうみ」の意味の「あはうみ」の変化した語で、中央に琵琶湖があるところからの名称だという。この「江」は川ではなく、湖のことである。
 大河ドラマのタイトル「江」は主人公の名で、父親は北近江の戦国大名浅井長政であるが、「江」がこの近江から名付けられたのかどうかは、残念ながらよくわからないらしい。

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