第56回
「確信犯」、間違って使ってませんか?

 「電車が遅れて会議に出られなかったと言っているけど、あれは確信犯だよね」という言い方をすることがある。だが、この場合の「確信犯」は本来の意味の使い方ではないということをご存じだろうか。
 「確信犯」のもともとの意味は、政治的、思想的、宗教的な確信に基づいた義務感や使命感によってなされる犯行のことで、たとえば、思想犯・政治犯などと呼ばれるものがこれにあたる。そもそも「確信犯」とはドイツの法哲学者ラートブルフ(1878―1949)が提唱したもので、日本でも戦前から論議の対象となっている法律的な概念なのである。
 ところが、最近ではその正しい意味が忘れ去られてしまい、冒頭の例文のような、犯罪というほど重大な行為とはいえない場合でも用いられるようになってしまったというわけである。平成14(2002)年度の「国語に関する世論調査」でも、50パーセント以上の人が重大な犯罪とはいえない行為についても使うと答えている。
 そのため国語辞典でも、本来の意味の他に、悪いことだとわかっていながらあえて行う悪事という意味を付け加えたものも出始めている。
 ことばは長い間に本来の意味とは違う意味で使われてしまうことが決してないわけではない。だが、ことばの規範という観点からすればやはり誤用といえるので、辞書をしっかり読んで正しい意味をちゃんと理解したうえで使うようにしたい。

キーワード:

さらに悩ましい国語辞典
―辞書編集者を惑わす日本語の不思議!―

日本最大の辞書『日本国語大辞典』の編集者はまだまだ悩んでいる! 辞書で定義しずらい言葉の悩み辞書にした「悩ましい国語辞典」の第2弾。
そんたく【忖度】[名]「忖」も「度」もはかるという意味。他人の心を推し量ることで「なにか配慮をする」の意味はない。/しんしゃく【斟酌】配慮までする意味なら「忖度」でなく、「斟酌」の方がしっくりする。この語「手加減する」と意味は変化し続け、今、忖度で起きている現象が斟酌でも起きている……

悩ましい国語辞典
―辞書編集者だけが知っていることばの深層―

「日本国語大辞典」の編集担当者を惑わすことばの不思議スリリングに揺れる日本語の深さ! 面白さ満載!
「うがった見方」は「疑ってかかるような見方」ではない/「悲喜こもごも」を合格発表の描写で使うのは誤り/「まじ! 」は、江戸時代の小説に使用例がある/スコップとシャベルはどちらが大きいか?西日本と東日本では違う/「谷」を「や」と呼ぶのは音読みでも訓読みでもない方言/「あばよ」の語源は幼児語の「アバアバ」

ジャパンナレッジとは

ジャパンナレッジは約1500冊以上(総額550万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。

ジャパンナレッジ Personal についてもっと詳しく見る