第58回
どういうときに「檄(げき)を飛ばす」?

 「社長が会議で今年度の売上げ計画について檄を飛ばす」と言ったとき、みなさんはどういう状況を想像するだろうか。大方は、社長が机をドンとたたいて唾(つば)を飛ばしながら、「万難を排して目標を達成しなければならない」と叫んでいる姿を思い浮かべるのではなかろうか。
 だが、それは「檄を飛ばす」の本来の意味とはいえないのである。
 「檄を飛ばす」の本来の意味は、自分の主張や考えを広く人々に知らせて同意を求めたり、それによって人々に決起を促したりするということ。なので、冒頭の社長は決して激高しているわけではなく、自分の主張を単に社員に説明しているだけなのである。
 ところが、近年「がんばれと励ます」「激励する文書を送る」という意味でも用いられる傾向にあり、平成19(2007)年度に文化庁が行った「国語に関する世論調査」でも、本来の意味で使う人が19.3%、もともとはなかった「励ます」の意味で使う人が72.9%という逆転した結果が出てしまった。
 なぜこのような結果になったのかというと、「げき」はおそらく同音である「激励」の「激」と誤解されているのではないだろうか。だが正しくは「檄」で、「檄」とは古代中国で、召集または説諭のための文書のこと。それが、一般大衆に自分の主張や考えを強く訴える文章の意味になったのである。
 この70%以上も誤解している人がいるという結果は重く、どの辞典もこのことばの扱いに苦慮している。

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