第65回
「改」の「己」ははねてはいけない?

 先日編集部に、同じ漢字なのに一般向けの辞典と子ども向けの辞典では字体が違うのかという質問があった。よくよく聞いてみると、小学生のお子さんがいるお母さんで、一般向けの辞典の「改」と子ども向けの辞典の「改」では漢字の字体が違っていると言うのである。
 間違い探しのようだが、どこが違っているかおわかりだろうか。
 よく見ると「己」の筆の最後のところが、「改」ははねているのに、「改」ははねていないのである。
 これは一般向けの辞典と子ども向けの辞典では、使用する活字が違うために生じた、微妙な違いなのである。具体的に言うと前者の「改」は明朝体(ただし、この「日本語、どうでしょう?」の字体はゴシック体)、後者の「改」は教科書体なのである。明朝体と教科書体のデザインの違いについては、この「日本語、どうでしょう?」の53回でも触れたのだが、この方のお子さんはテストで明朝体のようにはねて書いたら×をもらったというのだから深刻である。
 この「改」「改」についても「常用漢字表」に添えられた「字体についての解説」で触れられているため、その方にはそれをお教えしたのだが、納得できないご様子であった。それはそうであろう。テストともなればそれだけで成績に影響するのだから。
 一介の辞書編集者が生意気なことを言うようだが、小学校の先生に特にお願いしたいことがある。それは一度「字体についての解説」をざっとでいいから目を通していただきたいのである。それを見れば漢字のはねやとめの問題はかなり緩やかであるということがわかっていただけると思う。
 このような細かなことにこだわって、子どもを漢字嫌いにさせないでほしいと心から思うのである。

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