第66回
「すててこ」は「ステテコ」ではない

 夏の節電対策としてすててこが流行(はや)っているらしい。それも天才バカボンのパパがはいていたようなものではなく、そのまま部屋着にも使えるおしゃれなものが主流だという。
 「すててこ」というのはなんだか愉快な名称だが、語源はご存じだろうか。
 インターネットで「すててこ」を検索すると「ステテコではありませんか?」などと聞いてくるが、外来語ではなく立派な日本語である。もともとは、宴席などで踊ったこっけいな踊りで調子をとるはやしことばだったのである。
 『浮世床』(1813~23)にも「アすててこすててこすててこてんてこてんとんとん」という、どういう節回しなのか知りたくなるようなはやしことばが紹介されている。
 明治初期には「すててこ踊り」というこっけいな踊りが宴席などで起こる。後ろ鉢巻きをして、じんじんばしょり(着物の背縫いの所をつまんで、帯の結び目の下に挟みこむこと)の下にだぶだぶな下ばきをはき、鼻をつまんで捨てるまねをして踊ったらしい。
 この踊りを、明治13年(1880)頃、東京の落語家三遊亭円遊(三代目)が寄席で踊って以後流行した。円遊がこの踊りを踊るときにはいた、ひざの下まであるズボンの下ばきが現在のすててこの原型である。
 今風のおしゃれなものは、確かにステテコなどとカタカナ仮名書きにしたくなるものなのかもしれない。だが、「クールビズ」などとうたっているステテコを見ると、いくらおしゃれになったからといって、仕事にはいていくのはちょっと無理があろうという気がする。

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