第69回
夏の美しい日本語

 TOKYO FM の「シナプス」という昼の番組で、時折ことばの話をしている。先日は夏の美しい日本語を紹介してほしいと頼まれて話をした。
その時取り上げたのは、「銀漢(ぎんかん)」「油照(あぶらで)り」「草(くさ)いきれ」「夏座敷(なつざしき)」の4語であった。  
 放送の前に何語か候補として挙げたのだが、時間の都合でボツになったものがある。せっかくなので、この場を借りてそれらを紹介させていただきたい。
ボツになったのはどういう語かというと、「夕涼(ゆうすず)み」「蝉(せみ)しぐれ」「海鳴(うみな)り」の3語である。
 夕涼みは、夏の夕方、戸外や縁側・縁台に座って涼を取ること。盥(たらい)に水を張って行水した後に夕涼みを楽しむ風習は、江戸時代からつい最近まで、庶民の生活に深く根付いていた。最近は縁側や縁台のある家は少なくなったが、節電が叫ばれている今年はエアコンばかりに頼らず、夕方は外で涼んでみるのもいいかもしれない。
 蝉しぐれは、多くの蝉の、鳴きしきる声が、大きくなったり小さくなったりして、まるで時雨の降る音のように聞こえることをいう。芭蕉の「閑(しづか)さや巖にしみ入る蝉の声」(『奥の細道』)は蝉しぐれを詠んだ句として有名である。
 海鳴りは、台風や強い低気圧が海上にあるとき、近くの海岸で聞こえる遠雷のような音。静岡県遠州灘の海鳴り(波小僧とも呼ばれる)は、環境省選定の「残したい日本の音風景100選」に選ばれているそうだ。
 いずれもいかにも夏を感じさせる日本語だと思う。

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