第76回
「辞書」と「辞典」

 第49回の「辞書引き学習」のすすめで紹介した、中部大学深谷圭助准教授の講演会の会場で、「辞書」と「辞典」はどう違うのかという質問を受けた。確かに深谷氏は「辞書引き学習」と言っていて、「辞典引き学習」とは言っていない。その理由はご本人にお聞きするしかないのだが、ほとんどの国語辞典は、「辞書」「辞典」を同義語として扱っている。
 『日国』を引いてみると、「辞典」は「辞書のやや新しい呼び方。」とある。ではどれほど新しいのかというと、やはり『日国』で確認できる「辞書」の最も古い例は、幕末に刊行された蘭日辞書『和蘭字彙(オランダじい)』で、これは安政2~5(1855~58)年の成立である。
 一方「辞典」はというと、明治以後に生まれたようで、国語学者の物集高見(もずめたかみ)が編纂(へんさん)した『日本小辞典』(明治11(1878)年)が最初だと言われている。同書の序文には「文明諸国莫不有辞典(文明国に辞典のない国はない)」とも書かれている。
 その差わずか20数年であるが、なぜか「辞典」の方が書名として使われることが多く、現在でもたとえば『現代国語例解辞典』『プログレッシブ英和辞典』のように、「○○辞典」の形で使われことが多い。これに対して「辞書」は単独で使われることが多いという違いしか見あたらず、あまり違いがないという結論になってしまう。
 筆者も「辞書」「辞典」とほとんど意識せずに両方を使っている。ただ、冒頭の「辞書引き学習」という名称は、「辞典引き学習」よりも語呂がいいような気がしないでもないのだが、いかがであろうか。

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