第82回
化粧まわしと紫色

 何かと暗い話題の多かった相撲界だが、久しぶりに日本人の新大関が誕生し、今年最後の九州場所は少しは盛り上がりそうである。
 その新大関を取り上げたあるテレビ番組で、大関に昇進すると化粧まわしの馬簾(ばれん)と呼ばれる下飾りの部分に紫色を使うことが許されるということを知った。
 このように、ある地位以上の者にしか使用を許されない色のことを「禁色(きんじき)」というのだが、大相撲にもそれがあるとは知らなかった。
 大関以上に許される紫色は、古くから身分の高いものだけが着用を許される色とされている。
 清少納言の『枕草子』には、「なにもなにもむらさきなるものはめでたくこそあれ(何でもかでも、紫であるものはりっぱなのである)」(「めでたきもの」)とあるほどである。
 紫色の衣服の使用をめぐっては江戸時代に政治事件も起きている。歴史好きの方なら「紫衣(しえ)事件」という出来事をご存じであろう。寛永4年(1627)に後水尾天皇が大徳寺・妙心寺の僧に与えた紫衣着用の勅許を徳川幕府が無効であるとした事件で、これにより幕府は朝廷に対して優位性を示したとされている。紫衣というのは紫色の法衣(ほうえ)や袈裟(けさ)のことで、高徳の僧尼が朝廷から賜ったものである。幕府はこれに抗議した大徳寺の沢庵(たくあん)和尚らを処罰している。
 紫色を使えるということは、これほど重い意味を持っているのである。新大関にはそれに恥じない名大関になってもらいたいと思う。

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