第98回
「五十音図」があぶない!?

 高校の国語の教師をしている知人から、最近の高校生の中に「五十音図」が書けない生徒がいるという話を聞いた。古典の授業で古語動詞の活用を教えようとして異変に気づいたのだという。「五十音図」はア行、カ行、サ行…とあり、各行が母音によってア段、イ段、ウ段…となるように整然と配列されているのだが、その関係が理解できていないのだそうだ。そのため、動詞の四段活用とか上二段活用などと言ってもなかなか理解できないらしい。
 その話をさらに日本語学を専門にしているある大学教授にしたところ、そんなことは今始まったことではないという驚くべきことを聞かされた。その大学教授は非常勤講師として出講している大学でやはり異変に気づいたのだそうだ。そのため、大学1年生の前期の試験では学生に「五十音図」を埋めさせているというのである。しかも、そのテストで正答率が高いのは外国人留学生なのだそうだ。
 電子辞書が普及して、アルファベットの順序がわからない生徒や学生が出てきたという話を聞いたことがある。確かに電子辞書では単語を打ち込めばことばが検索できるので、アルファベットの順序などおぼえなくても引けるのだが。その話を聞いたとき、「あいうえお」の順序も今にわからなくなるかも、などと半ば冗談で言っていたのだが、どうやら冗談ではなくなってしまったらしい。
 外国人留学生が正確に「五十音図」が書けるのは、本国できちんとした日本語の教育を受けてきたからだそうである。だったらそれが日本でできないわけがない。
 いきなり「五十音図」を教えることも大事だが、紙の辞典をたくさん引かせるという方法も効果的だと思う。たとえば、このコラムでもたびたび紹介している深谷圭助氏が発案した「辞書引き学習」では、小学校の低学年の子でも1000語以上引くと五十音の順番が頭に入り、すらすら辞書が引けるようになるそうだ。
 「五十音図」は辞書の中でことばの配列を決めるためだけのものではない。動詞などの活用や仮名遣いを考える上でも、とても重要なものである。日本人ならぜひ完ぺきにおぼえて欲しいと思う。

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