堀口茉純のやっぱり江戸が好き!堀口茉純のやっぱり江戸が好き!

「三度の飯より江戸が好き」というお江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーこと堀口茉純さんが、江戸後期の地誌『江戸名所図会』を江戸の暮らしという視点から読み解くコーナー。江戸っ子のリアルな生活、ぜひ体感してみてください。毎月1日と15日の更新です。

富岡八幡宮 其二第七巻 十八冊 二丁

食の名所でもあった八幡さま

御本殿の辺りの雰囲気はいまもあまり変わっていませんが、当時は参道沿いに花柳界が広がっていました。聖と俗が表裏一体、これぞ江戸の魅力です!

『江戸名所図会』の本文には、当時の富岡八幡の境内の様子がこう記されています。

 当社門前、一の鳥居より内三、四町が間は、両側茶屋・酒肉店軒を並べて、つねに弦歌の声絶えず。ことに二軒茶屋と称する貸食屋(料理屋のことか?)などありて遊客絶えず。牡蠣・蜆・蛤・鰻の類をこの地の名産とせり。

神社の境内とはいえ、かなり繁華で娯楽性の高い雰囲気だったようですね。

高級料亭の二軒茶屋。冬場になると広い御庭に降り積もる雪を鑑賞する「雪見」の名所になりました。風流だな~。

そのなかでも特に二軒茶屋が評判だったとのこと。二軒茶屋は、初めは参詣人に田楽やお団子などを売り出す腰掛茶屋としてスタートします。その後、富岡八幡宮界隈に花街が形成され、富裕層の参詣人が増大すると、ニーズに合わせて次第に高級料理を出すようになり、最盛期には8~9軒の料理屋が軒を連ねましたが、やがて図会に見られる"いせや""松本"の二軒に淘汰されていきました。新鮮な海産物が、掘割を通って高速船で運ばれてくるわけですから、料理のおいしさは折り紙つき! 富岡八幡宮は食の名所でもあったわけですね。(ちなみに、二軒茶屋はその後、天保の改革で廃業となりますが、松本だけは営業を再開し、明治まで続きます)

現在の境内に食の名所の面影はほとんどありません。ただ一つ、鳥居をくぐってすぐ左に「深川宿」という飲食店があり、あさりたっぷりの深川飯(当時の漁師が食べた味噌汁のぶっかけ飯)がお腹いっぱい頂けます。まったりクリーミーなお味噌なのに、あさりのお出汁がよく出ていて、後味はサッパリ。散策の際のグルメスポットに最適ですよ!



深川花街の光景

富岡八幡宮の近くには木場があり、材木を扱う多くの商人・職人たちが住むようになります。すると、必然的に商談・会合の場所が必要になり、料亭が多く建ち並びました。

そこで大活躍したのが辰巳(たつみ、江戸市街の南東方の意)芸者たち。初めは座敷に花を添えるだけの存在でしたが、やがて彼女たち目当ての客もひっきりなしに訪れるようになり、深川の花街繁栄の中心的存在となっていきます。辰巳芸者のウリは意気とハリ。冬でも決して足袋を履かず、左手で褄(つま)をとる(こうすると着物の構造上、裾から手を入れられてセクハラされる危険が回避されます。つまり、「芸は売っても色は売らない」という意思表示なわけですね)といった男勝りでさっぱりとした様子が、しんねりむっつりとした吉原の花魁(おいらん)達とは対照的で、新鮮に映ったのでしょうね。

よく見るとあちこちに堀が張り巡らされています! 水上交通が盛んだったんですね~。

日が暮れてくると、張り巡らされた掘割のあちこちに舟遊びの船が浮かび、辰巳芸者の三味線と歌声が毎晩のように川面に響いていたといいます。

今では見る影もありませんが、深川は当時、ベニス顔負けの風情ある水上都市だったようです。

※この文章は「お江戸いいね!~I Like EDO」の「ほーりー 江戸を斬る!」を加筆修正したものです。

深川のいま②

「深川の八幡様」として親しまれている、富岡八幡宮。夏の例大祭、深川祭(深川八幡祭り)で知られ、神田祭、山王まつりとともに江戸の三大祭りと呼ばれています。寛永19年(1642)に徳川4代将軍家綱の成長を祈念して始められお祭りは別名水かけ祭りとも呼ばれており、町内神輿の担ぎ手に豪快に浄めの水をかけるのが名物。撮影にお邪魔した日は祭り近づく8月の猛暑日。残念ながら祭りの光景は撮れなかったため、平成13(2001)年に建立された測量家・伊能忠敬像をパチリ。測量旅行に出発する際、必ず八幡様を参拝していたそうです。

(写真・文/ジャパンナレッジ編集部)

ジャパンナレッジとは

ジャパンナレッジは約2万冊以上(総額550万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。

ジャパンナレッジ Personal についてもっと詳しく見る

会員ID、パスワードをお忘れの方

『江戸名所図会』とは

江戸時代を代表する地誌で、江戸名所の集大成と評される、江戸後期の"ガイドブック"。斎藤幸雄・幸孝・幸成(月岑)の親子三代が手がけた大事業で、天保5(1834)年と天保7(1836)年の二度に分け、7巻20冊が刊行。1000を数える項目には、江戸はもちろん、現在の神奈川、千葉、埼玉の名所も含まれる。絵師長谷川雪旦の742点の挿画では、神社仏閣や景勝地などの実地調査に基づいた俯瞰図や、生活風俗に関係する事柄の詳細で写実的な描写が楽しめる。歴史や風俗資料としても活用されている。

プロフィール

堀口茉純(ほりぐち・ますみ)

堀口茉純(ほりぐちますみ)

江戸にくわしすぎるタレント=お江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーとして注目を集め、執筆、イベント、講演活動にも精力的に取り組む。初めての著書の『TOKUGAWA15』(草思社)は歴史書籍としては異例のロングセラーに。近刊は『江戸名所図会』など近世の版本史料を駆使して江戸人の生活実態に迫る『江戸はスゴイ~世界一幸せな人びとの浮世ぐらし~』(PHP新書)。NHKラジオ第1『DJ日本史』、TOKYO MX『週末ハッ ピーライフ!お江戸に恋して』にレギュラー出演中。

江戸はスゴイ~世界一幸せな人びとの浮世ぐらし~

堀口茉純最新刊!

江戸はスゴイ
~世界一幸せな人びとの浮世ぐらし~

PHP新書
880円(税別)