堀口茉純のやっぱり江戸が好き!堀口茉純のやっぱり江戸が好き!

「三度の飯より江戸が好き」というお江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーこと堀口茉純さんが、江戸後期の地誌『江戸名所図会』を江戸の暮らしという視点から読み解くコーナー。江戸っ子のリアルな生活、ぜひ体感してみてください。毎月1日と15日の更新です。

隅田川両岸 大川橋第七巻 十九冊 八十丁

庶民の嘆願で架かった、通称吾妻橋

現在も浅草エリアとスカイツリーがある押上・向島エリアの懸け橋になっている吾妻橋は、江戸時代とほぼ同じ場所に、同じ長さで架かっています!

安永3(1774)年に、民間からの出願によって隅田川に架かる5つの橋のうち、最後に架橋されたのが大川橋(通称・吾妻橋)です。これにより浅草側から向島方面へ気軽に出かけることが可能になり、向島界隈は多くの観光客でにぎわうようになりました。

大川橋の下を通っている屋根船は遊覧目的の観光船。隅田川クルーズは人気の江戸観光でした。

図会をみてわかるように、“大川橋”というのが幕府が命名した正式名称。現在なじみのある“吾妻橋”という名称は民間の間での通称だったんですね。この辺りは『伊勢物語』(平安時代の歌物語。主人公のモデルは恋多きイケメン文化人、在原業平だといわれている)の東下りの段に登場するため、だれともなく“東橋”と呼ぶようになり、雅趣を求めて“吾妻橋”もしくは“吾嬬橋”と表記するようになっていったそうです。おお、江戸っ子、古典文学から通称を引っ張ってくるなんて、洒落てますね。

ただ単に江戸城から見て東側にあるから“東にある橋”という意味だ、という説もあるんですが(笑)、なにはともあれ、この通称のほうが通りがよかったために、明治になってから正式に“吾妻橋”と改名し、現在に至っています。



橋銭2文免除された人とは?

大川橋は民間の出願によって架けられた橋。そのため、幕府は許可の際に「万が一、橋が壊れて下流の両国橋などにぶつかり被害が出た場合は、その修築費用を負担する事」などの条件を付けました。脅しか!

しかし、長さ84間(およそ150m)、幅3間半(およそ6.5m)の橋が江戸時代中に流失することはなく、工事にかかわった大工さん達は褒賞を受けたそうです。

橋の維持管理をする橋番。身投げしようとする人は女性の場合「そんなくだらない理由で自殺しちゃいかん!」と止めたそうですが、男性の場合は「よっぽどの理由があるんだろう……」と察してあえて止めなかったとか。

大事な橋の管理維持にあたっていたのが、この絵のように橋のたもとに設けられた橋番所に詰める橋番さんたち。清掃や不具合がないかの日常的なチェックはもちろん、橋から身投げする人がいたら止めたり、喧嘩があれば仲裁をしたりしました。ちょっとした交番のようなイメージでしょうか。

また、橋の維持費という名目で、橋銭という通行料を徴収するのも重要な役割でした。通行人が渡ろうとすると番小屋からにゅっと長い竿の先にザルが付いたものが出てきて、そこに橋銭2文(およそ40円程度)を納めさせたそうです。ただし橋銭を払うのは庶民のみで、武家や僧侶は免除されていました。ずるいぞ~!

※この文章は「お江戸いいね!~I Like EDO」の「ほーりー 江戸を斬る!」を加筆修正したものです。

向島のいま①

浅草と向島を結び、鮮やかな赤が印象的な吾妻橋。台東区側には浅草寺や水上バス乗り場、墨田区側には東京スカイツリーがあり、江戸時代同様、現在も観光客をはじめとする多くの人が行き来しています。
吾妻橋が鉄橋になったのは、明治20(1887)年。明治18年の大洪水で、それまでの木橋が流失したのがきっかけだったそう。また大正12(1923)年の関東大震災でも被災し、昭和6(1931)年、現在の橋となりました。
さて江戸時代、管理をしていたという、橋のたもとの橋番所。現在その場所には交番があり、おまわりさんが観光客相手に道案内をしていました。

(写真・文/ジャパンナレッジ編集部)

ジャパンナレッジとは

ジャパンナレッジは約2万冊以上(総額550万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。

ジャパンナレッジ Personal についてもっと詳しく見る

会員ID、パスワードをお忘れの方

『江戸名所図会』とは

江戸時代を代表する地誌で、江戸名所の集大成と評される、江戸後期の"ガイドブック"。斎藤幸雄・幸孝・幸成(月岑)の親子三代が手がけた大事業で、天保5(1834)年と天保7(1836)年の二度に分け、7巻20冊が刊行。1000を数える項目には、江戸はもちろん、現在の神奈川、千葉、埼玉の名所も含まれる。絵師長谷川雪旦の742点の挿画では、神社仏閣や景勝地などの実地調査に基づいた俯瞰図や、生活風俗に関係する事柄の詳細で写実的な描写が楽しめる。歴史や風俗資料としても活用されている。

プロフィール

堀口茉純(ほりぐち・ますみ)

堀口茉純(ほりぐちますみ)

江戸にくわしすぎるタレント=お江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーとして注目を集め、執筆、イベント、講演活動にも精力的に取り組む。初めての著書の『TOKUGAWA15』(草思社)は歴史書籍としては異例のロングセラーに。近刊は『江戸名所図会』など近世の版本史料を駆使して江戸人の生活実態に迫る『江戸はスゴイ~世界一幸せな人びとの浮世ぐらし~』(PHP新書)。NHKラジオ第1『DJ日本史』、TOKYO MX『週末ハッ ピーライフ!お江戸に恋して』にレギュラー出演中。

江戸はスゴイ~世界一幸せな人びとの浮世ぐらし~

堀口茉純最新刊!

江戸はスゴイ
~世界一幸せな人びとの浮世ぐらし~

PHP新書
880円(税別)