テレビ、単行本、週刊誌に健康情報があふれている。いわく『Matty式マッサージが自宅でできる! 脂肪とり! むくみとり! こりとり! 解毒棒』『疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい』『「毛細血管」は増やすが勝ち!』『「脳の呼吸」を整えればあなたの全身はよみがえる!』『1日1分であらゆる疲れがとれる 耳ひっぱり』『寝るだけで腰痛が消える! 仙骨枕つき背骨コンディショニング』(2017年3月15日付Amazonの健康法の売れ筋ランキングより)

 私が雑誌編集者時代にやったのは「サルノコシカケ」や「紅茶キノコ」が、がんにいいという記事だった。

 どちらも一時期ブームになり飛ぶように売れたが、あっという間に忘れ去られた。

 『週刊文春』(3/16号、以下『文春』)は、納豆が脳卒中リスクを30%減らし、乳がん、前立腺がん発症リスクも下げるという特集を組んでいる。

 納豆で思い出すのは、フジテレビ系の人気情報番組「発掘!あるある大事典II」で「納豆がダイエットに効果的だ」と紹介して、スーパーなどから納豆が消えてしまった騒動のことだ。

 だが、後にこれが「やらせ」であったことが判明して番組は打ち切りになった。

 たしかに納豆に含まれるナットウキナーゼは、血管を詰まらせる血栓を溶解する力があるといわれる。私もほぼ毎日食べてはいるが、がん細胞まで死滅させるといわれると「?」である。

 その同じ号で『文春』は、健康情報番組の老舗であるNHKの「ガッテン!」(「ためしてガッテン」を改名)を信じるなという特集を組んでいる。

 同番組が2月22日に放送した『最新報告! 血糖値を下げるデルタパワーの謎』で、「睡眠薬で糖尿病が治療できる」「睡眠薬の使用で糖尿病発症の予防にも」などと解説をしたのである。

 だが、3月1日の番組冒頭で、小野文恵アナが「行き過ぎた表現があった」と謝罪し、沈痛な面持ちで頭を下げた。

 私も寝るときに睡眠導入剤を使っているが、睡眠薬で糖尿病が予防できるなら、私は糖尿病になっていないはずだが、残念ながら立派な糖尿病患者である。

 こうした言い方は、覚せい剤で脳こうそくが予防できるというようなものではないか。天下のNHKがやることではない。

 だが、問題はこれだけではなかった。

 番組で大阪市立大学医学部附属病院の稲葉雅章医師が、「糖尿病の患者さんも割と気楽に(睡眠薬を)飲んでいただいてもいい」と推奨し、カメラがたびたび「ベルソムラ」という商品をアップにして映していたという。

 この薬はMSDという製薬メーカーの睡眠薬で、ここの公開情報を見ると、稲葉医師はMSDから原稿執筆を引き受け、講師謝礼をもらっているのだ。

 また、彼が教授をしている大学にも寄付金200万円が支払われていた。稲葉医師とMSDは利益相反(一方の利益になると同時に他方への不利益になる)の関係にあるといわれても仕方あるまい。

 さらにこうした特定の薬を推奨しているように見せることは、薬機法に抵触する可能性があると、弁護士で薬害オンブズパースン会議の水口真寿美事務局長が指摘する。

 「番組は、全体として特定の医薬品を推奨するものとなっており、広告に該当する可能性があります」

 NHK広報局は、出演した専門家は他の薬剤についても解説していたが、その内容を十分に伝えることができず、配慮に欠けていたと、『文春』に答えている。

 『文春』の調べによると、それ以外でも、3月1日に放送した『決定版! コラーゲン100%活用SP』ではコラーゲンの効果を特集したが、コラーゲンが床ずれ(褥瘡=じょくそう)により損傷した皮膚を回復するとしたのは、医学的に問題があると批判している。

 「コラーゲンによる治療法のエビデンスレベルは高くない。ガイドラインの『推奨度C1』は、最も低いレベルで、やっても良いが効果があるかは分からない。そんな治療法を薦めるべきではありません」(小林記念病院褥瘡ケアセンター・古田勝経センター長)

 紹介されたデータや実験方法にも疑問符がつく。番組のディレクターが自身の肌をヤスリで傷つけ、コラーゲンを摂取した場合としなかった場合とで傷の治り具合を比較し、コラーゲンを摂取したほうが治りやすかったと結論付けているが、1人のケースを取り上げて結論を出すのは意味がないと、専門家から批判されている。それは当然だろう。

 私もこの番組をたまに見ることがあるが、単なるバラエティ番組として見ていればいいが、この番組の重大な欠陥は、北里大学薬学部分子薬理学の川島紘一郎客員教授が指摘するところにあるはずだ。

 「明らかに科学的な手続きを欠いているにもかかわらず、さも科学的な結果であるかのように見せている。これでは視聴者が誤解することになる」

 長年この番組の司会をやり、知名度を上げた落語家の立川志の輔は、こういう批判にどう答えるのだろうか。

 いや~、この番組はですね、ちょっとした生活の中にある健康へのヒントをお伝えしているだけで、医学的にどうかなんていわれちゃうと困ってしまうと、逃げるのだろうか。

 昨年10月26日に放送された『大腸がんにならないぞSP』では、大腸がんの内視鏡検査に美肌効果がある、検査の前に強力な下剤を飲み、便や老廃物を排泄し、腸内を空っぽにすることで美肌やダイエット効果があるというのである。

 私も経験があるが、この検査は内視鏡でやるので、腸内を傷つけたりするリスクがあり、医者は数年に1回にしたほうがいいと言っている。

 また昨年10月12日放送の『まさか! ダイエットが引き起こす肝臓の悲劇』も、「番組では、体重が減っているときも含めた“ダイエット中”に脂肪肝になるという表現をしていますが、それは誤り。脂肪肝は体重が増える時になるんです。そのことを番組はちゃんと伝えていない」(大櫛陽一・東海大学名誉教授)と批判されている。

 怪しげな健康情報を同番組は垂れ流してきたと、『文春』は難じる。

 以前は、こうではなく、収録から放送まで時間をかけ、何重にもチェックする体制をとっていたという。それが今は全部抜けてきてしまっていると、この番組の立ち上げから18年間携わってきた元専任ディレクターの北折一氏が嘆いている。

 「安易なバラエティ化では番組の価値が下がる。さらに、明らかに行き過ぎな情報を、信頼感の高いNHKが流してしまうのは、罪が大きいことだと思います」(北折氏)

 本当に健康にいい情報が毎週毎週見つかるわけはない。それに他の民放もやっているわけだから、危なっかしい情報でも「まあいいか」とでっち上げ、放送しているのが実情だろう。そういうことを視聴者は知り、眉に唾をつけながらこの手の番組を見るべきだろう。

 私が信頼する医者に、あるサプリメントのことについて聞いたことがある。その医者は、もしどうしても飲みたいというのなら一番安いものにしなさい。どちらにせよ、効果のほどは期待できないのですから、と言っていた。

 私は今、サプリメントは100円ショップでと決めている。そのためかこのところ体の調子はすこぶるいい。

 昔、万病に効くといわれた丸薬「万金丹」というのがあった。子どものころ、鼻くそ丸めて万金丹、などという戯れ歌があった。どういう成分なのかわからないが、それを薬だと信じて飲めば、どんな病気も治ったという。

 今巷に溢れている健康情報の多くは万金丹のようなものばかり。そう思っておいたほうがいい。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 私の家には東芝製品が多い。テレビ、パソコン、ビデオなど、かなりある。画質がとりわけいいわけでもなく、スタイリングがいいわけでもなく、使いやすいからでもない。相性がよかったからだ。
 その東芝が倒産の危機に瀕している。最大の元凶はアメリカの原発メーカー「ウエスチングハウス(WH)」を買収したことからである。福島第一原発事故が引き金になり、原発部門は大赤字になった。だが、国が原発再稼働、原発の輸出を声高かに言っているから何とかなるだろうと、高をくくっていた。東芝の経営陣の無能はもちろんだし、安倍政権の責任もあると思うが、そこを衝くメディアはほとんどない。今この原稿を書いているのも中古で買った東芝製のパソコンである。2~3年でバッテリーがダメになるが、なんだか愛おしい。

第1位 「小池新党呆れるほどの圧勝!!」(『週刊ポスト』3/24・31号)/「『ベンゼン79倍』で小躍りの『小池都知事』に突き刺さったブーメラン」(『週刊新潮』3/16号)/「豊洲移転にも森友学園にも日本会議にも連なる小池百合子都知事の『父』怪人脈」(『週刊ポスト』3/24・31号)
第2位 「ともに自民党…妻子ある中川俊直が前川恵と重ねる『真夜中の密会』」(『フライデー』3/24号)
第3位 「三越伊勢丹社長大西洋氏『突然クビ』の全内幕」(『週刊現代』3/25・4/1号)

 第3位。新宿の伊勢丹は、私の家に近いこともあってよく行っている。といっても、高級品が多く、目の保養に行くだけだが。
 伊勢丹が三越と一緒になったときは驚いた。店のカラーが違うし、客層も相当違うのではなかったか。
 その大百貨店グループが、カリスマ社長の突然の辞任で揺れている。たしかに中国人の爆買いがなくなり、軒並みデパートの売り上げは落ちているようだ。
 さらにここは伊勢丹と三越の対立があり、この騒動は尾を引きそうだという。
 『現代』は3月1日に大西洋(ひろし)社長にインタビューしていた。それが事実上の「遺言」になってしまったという。
 そこでは、自分が「構造改革を進めている」と言うと、店を閉めるのかとすぐメディアは聞いてくる。「本来メディアというものは、もっと本質論に踏み込むべきだと思うのです」とメディアに対して苦言を呈していたというが、メディアを買いかぶってはいけない。
 17年3月期の営業利益予想は240億円と前年比で3割減だというから、トップ交代は致し方ないのであろうが、この交代は社員が知る前に日経新聞にすっぱ抜かれたそうである。
 では、今度の社長になるという杉江俊彦とはどんな人物なのか。頭が切れ嫌味もない人間だそうだが、

 「よくも悪くも非常に『優等生的』な人物。社内でも、『杉江さんが就任らしい』という話題が出ても、『どんなことをしてくれるんだろう』といったわくわくした感じはありません」(同社社員)

 どんな変わり方をするのか、来月でも伊勢丹に行ってみようか。

 第2位。お次は『フライデー』。自民党衆議院議員の中川俊直議員(46)が前川恵議員(41)と真夜中の密会を続けていると報じている。
 中川議員は3人の子持ち。目撃されたのは2月28日、夜7時過ぎ。渋谷区にある高級マンションから2人が姿を現し、近くのカフェレストランで食事。
 食後また、同じマンションへ帰って行った。2人の出会いは前川議員が初当選した14年12月。中川議員の父親は内閣官房長官や党幹事長を務めた中川秀直。中川議員は元テレビ東京政治部記者だそうである。
 先輩として何くれとなく相談に乗っているうちに男女の仲になったのか。
 週に3、4回会うこともザラだそうで、『フライデー』も何度か目撃している。
 『フライデー』が直撃すると、男のほうははっきりしないが、女のほうは堂々としている。
 「深夜にマンションで会うことが疑いを招くという意識は、まったくありませんでしたね」
 こういう神経の人間が国会議員だというのが、日本の政治の現実である。

 第1位。小池都知事と石原慎太郎のバトルが続いている。やや石原寄りと思われる『新潮』が、環境基準の79倍のベンゼンが検出されたと発表した豊洲の地下水モニタリング調査をした業者が、都議会の特別委員会で「都に指示され、適切ではない方法で採水を行った」と爆弾発言したと報じている。
 調査するためには、溜まっていた水には雨水なども混じっているので取り除く必要がある。これをパージというそうだが、それまでの調査ではパージの翌日以降に井戸に溜まった純粋な地下水を分析していた。
 だが今回、1か所の井戸ではパージした水をそのまま分析に回したというのである。
 これでは、「採水条件が異なる場合は、過去の調査結果との単純な比較は困難となります」(京大大学院の米田稔教授)
 こうしたことに丁寧に答えているのだろうか、小池知事は。
 『ポスト』は7月2日に行なわれる東京都議選を予測し、小池新党が呆れるほどの圧勝をするという特集を組んでいる。
 3人区で自民も民進も落選。8人区で自民がゼロになり、小池新党は最大62議席を獲得するというのだ。
 自民が最大で31、公明が22だから、一躍小池新党が断然の第一党に躍り出る。
 『ポスト』は、これを境に、国政選挙でも同じことが起こり、安倍一強時代は終わりを告げるというのである。
 だが、小池はいまだに自民党であり、それも石原慎太郎と同じウルトラタカ派である。
 今はその牙を隠してニコニコしているからわからないが、彼女の仮面の下の顔が暴かれれば、小池の快進撃はどこかで止まること間違いない。
 『ポスト』は持ち上げておいて、小池の父親がどういう人物で、どういう人脈があるのかをかなり詳しく追いかけている。
 小池が高校生のころ、自宅は兵庫県芦屋にあった。父親・小池勇二郎の書生として住み込んでいたのが、後に東京都副知事になる浜渦武生(はまうず・たけお)、その時代によく出入りしていたのが内閣官房副長官になる鴻池祥筆(こうのいけ・よしただ)であったという。
 父親は、『ポスト』によれば、

 「戦時中、スメラ塾という右翼結社に参加していた勇二郎氏は『第三世界』『民族独立運動』など超国家主義思想に傾斜し、戦後、神戸で貿易商を営んでエジプト、サウジ、クウェートなどアラブ諸国を何度も訪問して各国の大臣クラスに太い人脈を築き、石油の買い付けにも成功する。当時のアラブ世界では名が通った日本人だった」

 政治好きだった父親は、青年作家・石原慎太郎が68年、参議院選全国区に出馬すると、石原の「日本の新しい世代の会」の関西地区の選挙責任者となった。
 石原はこの選挙で301万票をとるのだ。その後父親も選挙に出るがあえなく落選。その後事業も傾き、芦屋の家を失う。
 父親は百合子をカイロ大学へ行かせ、自分もカイロに渡って日本料理店「なにわ」を開き、20年以上カイロに住み、帰国して13年に90歳で亡くなった。
 したがって慎太郎とは近しく、右派団体「日本会議」の石原は代表委員であり、小池も国会議員時代に日本会議国会議員懇談会の副会長をしている。
 父親のルーツを見るまでもなく、小池はガチガチのタカ派である。そうしたものを今は出さないが、国政となればそれも問われる。
 大体、石原とは同じ穴の狢(むじな)である。前に小池に都知事に出ろと勧めたのも石原であった。
 案外、この2人、裏で話し合っていたりするのかもしれない。メディアは、小池が嫌がることも聞かなくては取材ではない。すべてを明らかにしたうえで、まず都民が小池を判断しなくてはいけない。情報は多いほどいいのだから。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 自分たちならではの結婚式を。若いふたりなら大なり小なりそう願うものだろうが、最近では「常識」の範囲を一歩踏み出して、個性が際立った結婚式をプロデュースするビジネスが現れている。できることならやってみたいが、現実的には面倒すぎるというような式を、実際にかたちにする。「コンセプトウェディング」や「オリジナルウェディング」と呼ばれるものだ。

 プロデュースブランド「CRAZY WEDDING(クレイジーウェディング)」は、創業者の山川咲がテレビ番組『情熱大陸』で採り上げられるなど、コンセプトウェディングの代表的な存在である。廃工場を舞台にしたり、ハッピを着た昔ながらのお祭りをモチーフにしたり……。カップルが思い描く幸せのイメージは多種多様。それを完全オーダーメイドで実現させる。ジミ婚が支持を受ける一方で、どうせお金をかけるなら、そのイベントごとを思い切り楽しもうとする層もいるということだ。日常に忙殺される世の中で、すてきな夢を見せてくれるビジネスともいえよう。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 1月16日、貧困撲滅に取り組んでいる国際NGO「オックスファム(Oxfam)」が、ダボス会議(世界経済フォーラム)にぶつけて、格差問題に関する報告書「99%のための経済(An Economy for the 99%)」を発表した。

 この報告書で、富裕層と貧困層の間に横たわる経済格差が、これまでよりも広がっていることをが明らかになった。そして、格差を示す象徴的な言葉として用いられたのが「8人と36億人」という比較だ。

 世界でもっとも裕福な富豪8人の資産総額は約4260億ドル(約48兆6000億円)で、世界人口のうち所得の低い半分にあたる36億7500万人の資産総額とほぼ同じだという。

 「富豪8人」として紹介されたのは、アメリカの「マイクロソフト」創業者のビル・ゲイツ氏、低価格を売りにするスペインのファッションブランド「ザラ」のアマンシオ・オルテガ氏、世界の投資家として名を馳せるウォーレン・バフェット氏、メキシコの実業家のカルロス・スリム・ヘル氏、アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏、フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグ氏、オラクル創業者のラリー・エリソン氏、アメリカの通信社、ブルームバーグの創立者で前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏だ。ほとんどがグローバルに展開する企業の関係者で、世界から富を得ている人々だ。

 報告書では、10人にひとりが1日2ドル以下で暮らすことを余儀なくされているなかで、一握りの人が莫大な富を得ていることを批判。格差拡大が社会に亀裂をつくり、民主主義を脅かしていると警鐘を鳴らしている。

 オックスファムは、格差拡大の背景にあるものを、納めるべき租税を回避したり、経済力によって政治を動かし都合のよいルール作りをしたりしている企業や富裕層に原因があると分析。そして、各国政府が租税回避を阻止して「裕福な個人と企業」に対する課税額を引き上げ、国家間の法人税引き下げ競争を終わらせるように、各国が協議することを要求している。

 これを受けて、ダボス会議は今年「包摂的な成長(インクルーシブ・グロース)」という一応の格差対策が盛り込まれた報告書を発表した。だが、具体的なルールの見直しなどは示されず、反対にグローバリズムの効用ばかりが示された。

 日本でも、2016年度、2018年度に、法人税率が2段階で引き下げられることになっている。オックスファムが批判する世界の動きに追随しており、今後ますます格差の拡大が懸念される。

 だれもが医療や教育を受けられ、自分らしく生きていくための社会を実現するために、持続可能な富の再分配とはどのような形なのか。「8人と36億人」の比較から考えてみたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 欧米人からすると、日本人の体型はかなりスリムに見えるとか。ヘルシーな和食文化の影響はおそらくあるのだろうが、そうは言っても、ハンバーガーやピザも受け入れられているのだからフシギだ。日本は世界のあらゆるB級グルメが集まるフードスポット。ダイエットブームであろうとなかろうと、食べる人は食べている。

 カナダのファーストフードメニュー「プーティン」が、日本でも注目を浴びだした。フランス語圏でもあるケベック州発祥で、英語の「プディング」がなまったフランス語らしい。熱々のフライドポテトに、肉汁で作ったグレイビーソースとチーズをかける。チーズは細かくちぎったチェダーチーズで、ソースとの相性が抜群だ。いかにも高カロリーなメニューだが、これをカナダの若者は日常的に食べている。ステーキのつけ合わせにもなるとか。

 下北沢の「ロブソンフライズ」など、近年、東京都内で食べられるショップが増えている。JR東日本のジェフビーが展開する「ベッカーズ」では、「プーティーン」の名前で販売。さて、このギトギト感がどこまで浸透するか。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 白頭山は中朝国境にある山。標高は2744メートル。朝鮮半島では最高峰である。

 白頭山は、朝鮮民族にとって特別な意味を持つ山だ。民族の祖・檀君(だんくん)の出生地とされるからだ。加えて北朝鮮は第二次世界大戦後、同国を建国した金日成(キム・イルソン)主席が、白頭山を根城とする抗日パルチザンの指導者だったとしている。息子の金正日(キム・ジョンイル)総書記も同地で誕生したという。そのため、白頭山は、檀君を引き合いに、金日成主席の一族を神聖化するための、いわば「舞台装置」と言える。

 「白頭山の血統」は、こうした神聖な白頭山への崇拝を背景に、金日成主席の血を受け継ぐ者が正統と位置付けられている。現在の金正恩(キム・ジョンウン)委員長は金日成の孫に相当する。

 最近、「白頭山の血統」が取りざたされるのは、2017年2月、マレーシアで金正日総書記の長男である金正男(キム・ジョンナム)氏が、VXガスにより毒殺されたからだ。

 犯行には北朝鮮の国家ぐるみの関与がマレーシア当局の捜査で明らかになっている。金正男氏は、一時期、北朝鮮政権トップの世襲を批判していた。

 金正男氏はまぎれもなく「白頭山の血統」の一人である。その殺害指令は、弟でもある金正恩委員長でない限り、できないはずだ。金正恩委員長が、自身の座を脅かしかねない血統の一人を排除したのである。金正恩委員長は「自分に刃向かうものは断じて許さない」という、独裁者に共通する性格があるようだ。気になるのは、金正男氏の子息も暗殺される可能性を指摘されていることだ。

 「白頭山の血統」の裏には血生臭いものが見え隠れしている。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 大手出版社『小学館』の創立とともに94年を歩んできた学年別学習雑誌を『小学一年生』のみ残して休刊し、今年2月15日に発売された、おもに小学2~6年生向けの学習雑誌。

 時計などに表示されるデジタル数字の「8」は、0~9どんな数字にも変身できる……つまり、2~6年生まで、すべての小学生が学年にとらわれず楽しく学べる──といった裏(?)コンセプトが含まれたネーミングであるらしい。

 マンガにインタビューに付録に……と、さまざまなコンテンツに凝った工夫が凝らされており、どの学年の子どもでも、まんべんなく「そのときには行動に表れていなくても、潜在的にある程度は学習していて、あるきっかけで急激に学習成果が開花する“潜在学習”」ができる雑誌を目指すのだという。

 一見すると、ターゲット層の年齢幅はたった5年しかないのだが、この年頃の「たった5年」は、成人に例えるなら決して大袈裟な話ではなく「×10」の50年にも匹敵するとも思われる。仮に筆者が「20代~60代男女の誰もが楽しめる雑誌をつくってください」との依頼を受けたら……あまりの途方もなさに、いくら高額なギャラを積まれても、おそらく尻込みしてしまうに違いない。

 小学8年生──成功へと導くのは、まさに“茨の道”だろうが、もしそれなりの売り上げ部数を達成したならば……そのノウハウに、先行きの見えない出版不況を抜け出す突破口を見いだすことができるのかもしれない。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   



 真鱈やスケトウダラの卵巣を「たらのこ」という。今日では「鱈子(たらこ)」という呼称が一般的かもしれないが、京都では昭和期まで「たらのこ」と呼ぶのが当たり前だったので、今もなんの疑問もなく、そのまま呼ばれているのだろう。

 「たらのこ」は、年間を通じて塩漬けの外国産が出回っているが、寒くなってから春までの旬の時期は、日本で水揚げされた真鱈の生が手に入る。この真鱈のものは、実に大きく異様な見た目をしているが、独特の旨味が強く、酒の肴にも、あつあつのご飯のお供にしても、たいへんおいしく食べられる。

 初春の定番料理といえば、春らしい野菜との炊き合わせで食べるとおいしい。まず、ウドなどの春野菜や椎茸を用意し、だしで炊いておく。「たらのこ」は卵巣の形が崩れないように丸ごと薄い布などで包み、鍋でゆがいて芯まで火を通す。鍋から取り出し、水気をとって冷ましたら、好みの太さに輪切りにする。これをおだしに入れ、酒塩(さかしお)、砂糖、醤油のうす味で、ぐつぐつ煮る。できれば、この状態で一度冷ましながら味を染み入らせ、最後に、別に炊いておいた春野菜などと合わせ、もう一度温めながら味の微調整をすれば完成である。

 京料理では、鱈、鯛、鱧(はも)、ウナギ、カワハギ、フグなどの腹子や胆をよく食べるけれど、なかでも真鱈の「たらのこ」はいろんな食べ方のできる、重宝する食材である。昔は「もみじこ」と呼ばれるものがよく見られ、赤く着色したものを軽く炙り、お弁当のおかずやおにぎりの中身にも使った。最近は薄塩でナチュラルな色合いのほうが好まれ、生食用もある。小料理屋などでは、たらのこの袋を裂いて中身を取り出し、イカのお刺身や糸こんにゃくなどと一緒に和えて醤油をかけたものがお通しとしてよく出てくる。もっと簡単に、卵に鰹節を多めに振って、味醂と醤油をかけるだけでもおいしく食べられる。


存在感のある「たらのこ」。



鍋料理などで絶品「たらの白子」。


京都の暮らしことば / 池仁太   


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