新しく開発された治療法や薬は有効性と安全性が確認され、評価が定まったところで健康保険が適用されるようになる。日本では健康保険のきく保険診療と保険のきかない自由診療を併用することが原則的に禁止されており、これを破ると健康保険がきく治療も全額自己負担になる。しかし、がんなどの患者のなかには、評価が定まる前でも新しい治療を試したいという人もいる。そうした患者の選択肢を広げて利便性を向上するために、例外的に健康保険との併用を認めたのが先進医療だ。厚生労働大臣の承認を受けたものというのが条件となる。
 “先進”という言葉は最先端の優れた治療というイメージを抱かせるが、じつは新しく開発された治療法のなかで、健康保険を適用するかどうか評価している段階のもので、いうなれば実験段階の治療ともいえる。普及が進めば健康保険が適用される可能性もあるが、それまでは先進医療の技術料部分は全額自己負担だ。民間の保険会社の宣伝では、この先進医療の技術料部分の負担を強調して医療費の不安をあおるものもある。しかし、2011年度に先進医療を受けたのは1万4505人で、1回の平均額は約68万円(厚生労働省「平成23年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」より)。このデータが示すように誰もが先進医療を受けるわけではなく、すべてが高額ではないのだ。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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