日がとっぷり沈んだ秋の夜空を見上げると、無数の星が輝いている。「ほら、あんなにホシバッテるわぁ。明日はきっと晴れやなぁ」と、運動会を翌日に控えた祖父と孫の会話が耳に入ってくる。夜空に星がたくさん瞬いていることを、ホシバルという。京都府や滋賀県、山陰の一部地域で使われている方言で、「星晴れ」(ほしばれ)という言葉が変化したのではないかという説がある。
 星の見え方は、それだけでは天候を予測する根拠にはならないそうだが、上空の大気の状態が影響するため、翌日の天候との関連は深い。湿度が高く、水蒸気が多く含まれている夜には星は見えにくくなり、翌日の天候は悪化する可能性が高くなる。逆に、星が明るく輝き、空が高く感じられるなら、高気圧に覆われ、天候はしばらく安定しているはずである。晩秋から冬に星が綺麗にたくさん見えるのは空気が乾燥しているからであり、きらきらと瞬いているのは、上空を強風が吹いていることを意味している。夜空と関係した言い伝えも多く、「流れ星が多い年は、天候が荒れたり、日照りになる」とか、「星の周囲が赤い色を帯びていたら強風が吹く」など、人は古くから夜空を見上げながら明日の天気の変化を占ってきたのである。

   

   

京都の暮らしことば / 池仁太   


池仁太(いけ・じんた)
土曜日「京都の暮らしことば」担当。1967年福島県生まれ。ファッション誌編集者、新聞記者を経てフリーに。雑誌『サライ』『エスクァイア』などに執筆。現在は京都在住。民俗的な暮らしや継承技術の取材に力を入れている。
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