風疹の感染が、ここ数年では例を見ないほどの勢いで広がっている。国立感染症研究所が発表した4月24日現在の感染者数は4763人。昨年1年間の感染者数は2392人で、過去5年間で最多だったが、今年はわずか4か月でこの2倍に近い感染者数となっている。

 風疹はウィルス感染する病気で、発疹、発熱、リンパ節の腫れがおもな症状だ。通常は自然に治るが、まれに脳炎になったり、皮膚に紫斑が現れる人もいる。また、妊娠中の女性が感染すると、生まれてきた赤ちゃんが心疾患、難聴、白内障や緑内障などの先天性風疹症候群を起こす可能性もある。

 昨年1年間に風疹と報告された人の75%が男性で、そのうちの82%が20~40代だ。こうした罹患状況は、国の予防接種体制と大きな関係がある。

 風疹の予防接種は、1977年8月~1995年4月までは中学生の女子だけが対象だった。しかし、これでは風疹の流行が予防できなかったため、1995年から対象が男女の幼児に変更されている。この制度の谷間世代は風疹の予防接種を受けていない可能性が高い。

 具体的な世代は、女性は1979年4月2日~1987年10月1日生まれ、男性は1987年10月1日以前に生まれた人だ。1964年以前に生まれた人は男女ともに定期接種の対象を外れているが、過去の自然流行によって抗体を得ている可能性が高く、今回の流行の感染者数も少ない。

 現在の年齢でいうと、女性は24~33歳、男性は24歳以上の人は風疹の予防接種を受けていない可能性が高く、今回の感染者の年齢層とも符合する。風疹の予防接種は1回だけでは免疫ができないこともあるので、現在は2回接種することになっている。上記の年齢層の人、過去に1回しか受けていない人は、改めて予防接種を受けることを検討しよう。とくに、これから妊娠を望む人、家族に妊娠中の女性がいる人などは接種の優先順位が高くなる。

 現在、風疹予防は麻疹(はしか)との混合ワクチンが接種されるが、1歳児と小学校入学前1年間の幼児は国の定期接種の対象となっているので原則的に費用は無料だ。この年齢に当てはまらない人でも、費用助成をしている自治体もあるので、住所地のある市区町村窓口で相談してみよう。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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