アメリカのオバマ大統領とのからみでも有名な長崎県雲仙市の小浜温泉で、2013年4月、地熱発電の新しいかたち「温泉バイナリー発電」の実証試験がスタートした。小浜温泉の熱量(源泉温度×湧出量)は、日本一どころか、世界一ともいわれている。ただし、そのすべてが活かされているわけではない。温泉としては温度が高すぎるので冷まさなくてはいけないし、湧出するお湯の7割が実際には海に直行する。この熱を有効活用しようという試みである。

 「バイナリー」とは「2つの」という意味。蒸気で直接に発電タービンを回すのではない。水よりも沸点が低い媒体・フッ素化合物を、温泉熱を使って気化させてから、タービンを動かすという仕組みだ。「加熱」「媒体」と2つの熱サイクルを踏むことから「バイナリー発電」と呼ばれる。従来の地熱発電の方式では温泉の枯渇が心配されたが、この方法であれば、余剰の熱エネルギーを用いて源泉の湯温調節に益しつつ発電が行なえることになる。今回の実験では1年間のデータを集め、事業化などへの道をさぐる予定だ。なお、小浜温泉のニュースは特に注目されることになったが、バイナリー発電の実験はこれだけでなく、各地の温泉地でチャレンジされている。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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