妊娠、出産をきっかけに、解雇されたり、契約を打ち切られたりするマタニティー・ハラスメント(マタハラ)が問題となっている。

 連合の調査によれば、妊娠経験のある女性の25.6%がマタハラの被害を受けている。たとえば、「妊娠・出産がきっかけで、解雇や契約打ち切り、自主退職への誘導等をされた」「妊娠中・産休明けなどに、残業や重労働などを強いられた」など、働きながら出産・子育てをする女性への無理解がうかがえる。

 労働基準法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法では、妊娠・出産した女性に関するさまざまな配慮義務を設けており、そもそも本人から申し出がないのに、妊娠や出産、育児を理由に解雇や雇用形態の変更を強要することは法律で禁止されている。その他、降格、減給、自宅待機を命じる、不利な配置転換、非正規労働者(期間労働者)との契約更新をしないなども違法行為だ。

 また、産前産後の休暇中、産休明け後30日間理由を問わず解雇することはできない。産後1年以内の解雇は、「妊娠・出産・産前産後休業取得などによる解雇でないこと」を事業主が証明しないかぎり、無効になる。

 労働基準法では妊娠中の時間外労働の免除や仕事の軽減を、男女雇用機会均等法では通院休暇の付与などを規定している。育児・介護休業法では、育児休業を取得する権利はもちろん、子どもが3歳になるまでは時短労働、フレックスタイム制の導入などの配慮義務も課している。また、小学校入学前の子どもが病気になったときは看護休暇を取れることも認めている。

 だが、必ずしもこうした配慮が行なわれていない企業もあり、当の労働者が法律の存在を知らないこともあるようだ。そのため、マタハラを受けても泣き寝入りしている女性も多い。心当たりのある人は、労働基準監督署、労働組合(ユニオン)、労働問題にくわしい弁護士などに相談を。

 安倍政権では、成長戦略のひとつとして「女性の活躍」を掲げて、育児休暇の3年取得、女性管理職の登用などを打ち出している。だが、すべての女性にその道が開かれているとは言い難い。希望するすべての女性が、働きながら子育てすることが当たり前の社会になるように、早急な環境の整備が求められる。


 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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