1964年から2020年へ。半世紀以上の時を超えて、東京にオリンピックがやってくる。かつての東京五輪は、外国客を迎えるのにベストな環境とは言えず、だからこそできうる限りホスピタリィを高めようとする気概があった。ごみ問題に対応するためにポリバケツが、快適なホテル空間を短い工期で仕上げるためにユニットバスが登場した。案内板などに見られるピクトグラム(絵文字)も、五輪がきっかけで普及したものだ。相手を慮(おもんぱか)る精神が、世界有数の観光都市・TOKYOを創り上げたと言っても過言ではない。

 オリンピック招致の最終プレゼンで、滝川クリステルが残したスピーチ。流麗なるフランス語の中に突如として現れ、そのインパクトから幾度となくリピートされたキーワードが「お・も・て・な・し」だ。昨今、外国人のあいだで日本のサービス哲学が評価を得ている現状を認識し、明確に表現した。実際、我々が海外に行くとお店の対応に愛想が感じられないことも多い。五輪関連の英語を紹介した読売新聞(2013年10月6日付)では、「おもてなし」の説明を「Japanese‐style hospitality based on selfless behavior(見返りを求めない日本風歓待)」とした。外国に日本独自の概念を伝えようとすると、なるほど、その特異性が際立つものだ。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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