カエデ科カエデ属の総称で、モミジも同じ意味である。概して葉の裂け目の深いものをモミジといい、裂けの浅いものはカエデと呼び分けている。例えば、京都市の木であるイロハモミジ(別名タカオカエデ)は、葉が五つか六つほどに分かれて、深く裂けた代表品種といえよう。また、山裾の紅葉には、葉が直径10センチ以上もあるオオモミジやヤマモミジの品種が見られ、いずれも葉の裂け目が深い。反対に、カエデという名称の代表はハウチワカエデ。葉の裂け目は浅く、ふっくらとした丸みのある印象がかわいらしいカエデである。

 カエデの園芸品種として、日本ほど多くの種類がある国は珍しく、このような品種の改良が盛んに行なわれたのは江戸時代であった。江戸中期に稲苗(いななえ)商をしていた伊藤伊兵衛三之丞(さんのじょう)らがまとめた『花壇地錦抄(かだんじきんしょう)』には、114種類ものカエデの品種についての記述が残っている。

 京の町に北から比叡おろしが吹きおろし、かさこそと葉ずれの音が聞こえ始めると、そろそろ紅葉狩りである。錦秋に染まった東山の峰に沿い、赤山(せきざん)禅院や修学院離宮、東福寺へと、紅葉の名所が続く。西に行くなら高雄(たかお)か、保津川の渓谷も美しい。最近では2010年の紅葉が当たり年で素晴らしく、例年、紅葉が見ごろになるのは11月24日前後だといわれている。


イロハモミジ。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   


池仁太(いけ・じんた)
土曜日「京都の暮らしことば」担当。1967年福島県生まれ。ファッション誌編集者、新聞記者を経てフリーに。雑誌『サライ』『エスクァイア』などに執筆。現在は京都在住。民俗的な暮らしや継承技術の取材に力を入れている。
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