まがい物だと思われた作品を鑑定したところ、じつに1928年以来となるゴッホの「新発見」であることが判明した……。2013年9月、まるで小説のストーリーのような報道があった。オランダ・アムステルダムのファン・ゴッホ美術館に持ち込まれた『モンマジュールの夕暮れ』が、ゴッホ本人の筆によるものと認定されたのだ。別の画家の作品と考えられていたため、これまでコレクターによって屋根裏にひっそりと保管されていた。9月24日から一年のあいだ、同美術館で一般公開される予定だ。

 美術の世界は門外漢にとってミステリーだ。日本では有名な美術館でゴッホの贋作が展示された例がある。また2007年のこと、ゴッホ美術館はビクトリア州立美術館(オーストラリア・メルボルン)所蔵の『ある男の肖像画』に対して、今回とは逆に偽物の鑑定を下している。約20億円とされる価値が失われたこわい話だが、じつは美術館というものは偽物を疑うことなく(あるいは大人の事情で「疑うことが許されず」)、展示していることがままあるという。真贋の世界はかように難しい。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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