「葬儀は火葬に」「墓は小さめに」と天皇皇后両陛下が示した自らの葬儀に関するお気持ちが話題を呼んでいる。

 『週刊朝日』(11月29日号、以下『朝日』)によれば、天皇が逝去されたときには、天皇自身が「火葬が望ましい」という意向があると、当時の羽毛田(はけた)信吾宮内庁長官が発言したのは2012年4月26日だった。

 葬儀も、国民の負担にならぬよう、簡素に、質素に行なうようにという天皇の考えが反映された「今後の御陵及び御喪儀のあり方について」というものが11月14日に宮内庁から発表され、話題を呼んでいる。

 「火葬に」という思いは実現したが、皇后陛下と同じお墓(陵)にという思いは、美智子皇后が「あまりに畏れ多いこと」と固辞したことで叶わなかったという。

 朝日新聞の皇室担当編集委員だった岩井克己氏によると、美智子さまは、「『私などが、めっそうもない。陛下のおそばに小さな祠(ほこら)でも建てていただければ』というお気持ちを示されていたようだ」という。

 そのため、御陵は合葬ではないが、天皇陵と少し小さめの皇后陵を並べて、二つが一体となって一つの陵をなすように設計されるようになったという。そして発表文にはわざわざ「同一敷地内に寄り添うように配置する」と明記されたのだそうだ。

 場所は武蔵陵墓地内の大正天皇陵西側で、総面積3500平方メートル。昭和天皇陵の8割程度になる予定だ。

 皇室の葬儀は代々土葬だったのではないかと思っていたが、仏教などの影響もあり、703(大宝3)年、女性天皇だった第41代持統天皇が初めて火葬されたそうである。

 その後、土葬と火葬どちらも行なわれていた時期があり、室町中期から火葬が定着したという。

 再び土葬が復活したのは江戸時代で、1654(承応3)年、後光明(ごこうみょう)天皇が神道にのっとって土葬になり、火葬は廃止されていく。

 大正時代に「皇室喪儀令」が整備され、天皇と皇族は土葬による葬儀が行なわれることが決定した。戦後この法律は廃止され、皇族の葬儀は火葬が定着するが、天皇と皇后のみ土葬が続いてきた。

 宮内庁によると、歴代天皇122人のうち、土葬は73人、火葬は41人、不明が8人だそうだ。『朝日』は、昭和天皇の葬儀と陵の造営でかかった費用は計100億円だったと書いている。

 天皇と皇后の温かい夫婦関係が伝わってくる、いい話である。


元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト5

今回から新設となった気になる記事ベスト5! やはり今週は猪瀬直樹東京都知事に関する記事が多かったので、その順位付けをしてみた。

第1位は徳洲会の徳田虎雄前理事長と次男の毅(たけし)代議士が、携帯電話で猪瀬氏にいくら選挙応援のカネをやるかという生々しいやりとりをスクープした『週刊新潮』の記事。

第2位は安倍首相が都知事の座にしがみつく猪瀬氏を見捨てたと報じた『週刊現代』。

第3位は少しは違った角度で「猪瀬都知事“血祭り”でほくそ笑む人々」と報じた『週刊ポスト』。ここでは次期都知事有力候補の舛添要一氏が、愛人との間に生まれた「婚外子」への養育費を、今はカネがないからと「ケチッた」と報じている。

第4位は猪瀬都知事と徳田虎雄氏をつないだ「一水会」木村三浩(みつひろ)代表を直撃した『週刊文春』。

第5位が、猪瀬都知事が辞任すれば「ウハウハ」なのは舛添要一元厚労相だと、さして新味のないことを書いた『週刊朝日』。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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