いまどきのスポーツ選手にとって厄介なのはマスコミ対応である。試合前の集中したいときや、手痛い敗北を喫したときにまで、無神経にマイクは向けられる。それで少しでも態度を硬化させようものなら、理不尽に噛み付かれてしまう。いかがなものかと、さすがに批判の声もあるが、それは諦観を持ってネット上につぶやかれるぐらいのものであろう。

 そんな中、2014年のソチ冬季オリンピックでは、わずか15歳の少女がなんとも挑発的な態度を見せた。女子フィギュアスケートの団体で、ロシアを金メダルに導いたユリア・リプニツカヤである。ニュース番組において練習後の様子が伝えられた際に、「良い練習ができました。メディアが邪魔でしたけど」とピリ辛なコメントを残した。「邪魔」が影響したか、シングルショートプログラムでは思うような演技ができず5位に。ただ実力は誰もが認めるところで、そのうえで物怖じしない発言をする様子は、日本では好感を持って迎えられたようだ。一方で、おとなりの韓国では、キム・ヨナに対する無関心的な態度から多少嫌われた向きもある。

 愛らしいルックスからくり出される、マスコミにおもねらない発言。「尊敬する人間はチェ・ゲバラ」など、出てくるエピソードがいちいち“男前”で格好良い。そこからネット上でついたアダ名が「リプニツカヤ兄貴」。さらに「略しすぎ」て「プニキ」と称されることもある。キティなどの日本文化も好むという「兄貴」。今後ますます日本人からの注目を浴びていきそうだ。

   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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