2014年3月31日、ついに『笑っていいとも!』が最終回を迎えた。昨年にその報が伝えられてから、「視聴率の低下」ということがよく語られたが、記者がちゃんと考察して書いたのか、いささか疑問。たしかに全盛期の視聴率からは大幅に下がったが、同時間帯民放横並び年間視聴率では25年連続トップを飾るなど、安定した数字を保っていた。タモリは、結局ずっと「お昼の顔」としての求心力を失わなかったのである。後番組の『バイキング』は、司会を日替わりにすることで新たな「お昼の顔」を育てることをあきらめた。タモリの代わりを見つけられなかったということなのだ。

 お昼にチャンネルを回しても『いいとも』が流れない。その喪失感を、「タモリロス症候群」ということで「タモロス」と表現する。NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』終了後にファンが陥った、「あまロス」から来ているのだろう。32年間の重みがあるだけに、自身でも意外な「タモロス」を感じた視聴者も少なくないようだ。なくなる前はなんとなく見ていた番組だったのに、ふとしたときに「もう見られない」と思うと淋しくなる。まるで去った恋人に後ろ髪を引かれている様子だが、ネット上にはこういったつぶやきが散見された。

 まさに一時代を築いた『いいとも』。その幕切れに際し、タモリは「明日もまた見てくれるかな?」と締めた。それまでの放送と同様に。これは象徴的である。娯楽の王としてのテレビは、はたして「明日(=未来)」もその力を誇示し続けられるだろうか?
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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