4月9日夜、神奈川県の市民団体『「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会』のもとに、ノルウェーにあるノーベル委員会から、戦争放棄を定めた憲法9条が2014年のノーベル平和賞候補として正式に受理されたことを知らせるメールが届いた。

 ノーベル平和賞は、スウェーデン人化学者のアルフレッド・ノーベルの遺言によって創設された世界的な賞のひとつで、国家間の友好関係の促進、常備軍の廃止・縮小、平和のための会議・促進にもっとも貢献した人物や団体に授与されることになっている。過去には、インドのマザー・テレサ(1979年)、南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ元大統領(1993年)などが受賞。近年では、アメリカのバラク・オバマ大統領が、プラハで呼びかけた軍縮政策の演説を理由に受賞した。

 今回、日本の憲法9条がノーベル平和賞候補になったのは、冒頭の市民団体の活動によるものだ。きっかけは、神奈川県で暮らす主婦(37歳)が、「憲法9条はノーベル賞を受賞する価値がある」とふと思いつき、ノーベル委員会に連絡をとったことから始まった。だが、受賞できるのは人物か団体のみ。憲法そのものは受賞対象ではない。また、国会議員や大学教授、過去の受賞者らの推薦が必要だ。

 そこで、この女性は自らインターネットで署名サイトを立ち上げ、協力者を増やし、2013年8月に「『憲法9条にノーベル平和賞を』実行委員会」を創設した。そして、ノーベル賞のノミネートの締め切りの2月1日までに大学教授などの推薦人を集めることに成功。また、受賞対象者を、憲法9条を有し、約70年間戦争をしてこなかった「日本国民」にして、約2万5000人の署名も添えてノーベル委員会に推薦状を送ったのだ。

 推薦状は正式に受理され、今年10月の発表を待つばかりだが、たとえ今回、受賞がかなわなくても、何度でも挑戦するという。

 憲法9条は、先の太平洋戦争での過ちを二度と繰り返さないために、戦争の永久放棄を決意したものだ。今、日本国内では、自民党政権のもとで、この平和憲法を改正しようという機運が高まっている。

 しかし、私たちが毎日を平穏に暮らせることと、日本が他国を侵略する戦争をしてこなかったこととは無関係ではないはずだ。その平和憲法を、手放していいものなのか。

 「憲法9条にノーベル平和賞を!」。

 そう思う心の底にあるのは、子どもたちの未来に戦争のない平和な世の中を残したいという切なる願いだ。現在、自民党を中心に進められている改憲論議は、平和を求める国民の思いを無視しているようでならない。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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