安倍政権が新たな新成長戦略の看板政策として「農協改革」を打ち出した。

 農協は「全国農業協同組合中央会」(JA全中)とその傘下の地域農協から成り立つ組織で、組合員数は約1000万。職員数は21万人を抱える。まさに日本農業を差配する大組織だ。

 改革の柱は、JA全中を頂点としたピラミッド構造「中央会制度」を廃止することだ。また、農産物販売などを手がける関連組織の全国農業協同組合連合会(JA全農)の株式会社化を視野に置くほか、農地売買の許可権を持つ農業委員会の見直しも行なう方針だ。

 JA全中は、その上意下達、画一的な経営指導体制への批判が根強く、「魅力ある農業」を創り出せていない。その影響もあるのか、日本農業は後継者不足に陥り、農業従事者の平均年齢は66歳を超える。「村役場を定年退職した人が90歳近い父親から農業を引き継ぐ」(九州の自治体首長)なんてケースも少なくないという。

 改革の旗を振る安倍晋三首相は「農業を新たな成長産業にするため、農業協同組合のあり方を抜本的に見直していきたい」とその意義を強調する。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で日本農業を取り巻く国際環境が厳しくなるなか、安倍首相としては「このままでは農業は立ちゆかなくなる。地域農協の自立を促し、企業の参入も認めるなど規制緩和が必要だ」ということだろう。

 こうした動きに対し、当事者のJA全中は反発している。全国の組合長などを集めて反対決議などを行なっているが、自民党農林族を含めて今ひとつ声が大きくならない。農協はいまも昔も自民党の有力支持団体なのだが地盤沈下が激しいということか。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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