いまや、日本は全国民の約4分の1が65歳以上の高齢者だ。

 2014年6月1日現在、日本人の65歳以上人口は概算で3265万人。2042年に約3900万人でピークを迎える見込みだ。世界で例を見ないスピードで高齢化が進むなか、国が頭を悩ませているのが2025年問題だ。

 団塊の世代が75歳以上になる2025年以降は、認知症患者の増加も見込まれており、医療、介護、福祉サービスの需要が高まるのは必須ともいえる。そこで、打ち出されたのが「地域包括ケアシステム」だ。

 高齢になって介護が必要になっても、住み慣れた地域で暮らしつづけられるように、医療、介護、介護予防、生活支援、住まいの5つのサービスを「包括的」に受けられる支援体制のことだ。病気やケガをしても、病院への入院は極力短期間で済ませ、ふだんは自宅や施設で暮らせるような支援体制を整えることを目指している。

 地域包括ケアシステムはもともと介護保険の枠組みのなかで提案されていたが、現在は病院や診療所での医療も含めた体制づくりに変わってきている。そして、2025年に向けて、3年ごとの介護保険事業計画の策定・実施、報告などが義務付けられている。また、それぞれの自治体には、地域の高齢者の総合相談、権利擁護や支援体制づくり、介護予防の必要な援助などを行なう中核的な機関として「地域包括支援センター」が設置されている。

 ただし、地域包括ケアシステムは、医療保険や介護保険のように全国一律のサービスではない。「これ」と決まったモデルはなく、市町村や都道府県が自主的に、地域の特性に応じてつくりあげていくことが求められている。

 システムの中心を担うのが、医療者なのか、介護施設なのかなどは、その地域によって異なってくるはずだ。今後は、それぞれの地域で、力と意思のある人々や団体がその中核を担い、その他の団体とネットワークを組んでシステムづくりを構築していくことが予想される。

 自分が暮らしている自治体では、どのような地域包括ケアシステムを導入しようとしているのか。市民も一人ひとり、注目していく必要がある。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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