バブル期には「高学歴・高収入・高身長」の「3高」が女性たちのあいだでもてはやされた。……ということになっている。「3高」、特に「高収入」に関しては、うさんくさい輩も多かったのだが。バブルがはじけて、夫の事業が崩壊してしまった、という悲劇はよく耳にしたもの。「3高」にこだわった女性と、こだわらなかった女性。どちらにせよ、その後の歩みは結局のところ「運」であったろう。

 結婚に夢がないのもさみしい話だが、「トラブルの少ない人生を送るためにどんな相手と結婚すればよいのか」、この視点はリアルな問題として存在する。最近話題になっている「4低」という言葉。2012年にオリックス生命保険が発表したもので、当時はいち新語に過ぎなかったものが、この2年のあいだにジワジワと浸透した感じだ。

  「4低」が示すのは「低姿勢・低依存・低リスク・低燃費」。「低姿勢」は「女性に対して威張らないこと」。「低依存」は「女性に家事を任せっきりにしないこと」。「低リスク」は「職場をクビになる可能性が低いこと」。「低燃費」は「経済観念があって節約などがちゃんとできること」。「低姿勢」「低依存」は、女性が働く時代を踏まえて、旧態依然とした「夫」というシステムの否定。「低リスク」「低燃費」は、かつて「高収入」が求められたのに対して、「ずっと稼いでずっと生活を維持できる」ラインが求められている、ということだろう。

 ただ、共働きで力関係がだいたい同じぐらいのカップルであれば、「4低」はそのまま、男性から女性に求められる結婚条件にも当てはまってしまう。男女ともに生き方が多様化している昨今、根本的に結婚に至らなくなってしまうわけだ。幸せなゴールインとやらは、いつの時代もまったくむずかしい。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
ジャパンナレッジとは

ジャパンナレッジは約1700冊以上(総額750万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。

ジャパンナレッジ Personal についてもっと詳しく見る