流行の発信基地として、多くの「ギャル」たちに愛されてきた渋谷の光景が、近年、目に見えて変わったように思える。渋谷109が2014年春に大規模改装を行なったことは、35周年の節目というイベント性よりも、ギャル系のブランドの凋落という文脈で語られることが多い。渋谷を渋谷たらしめていたギャルたちは、いったいどこへ行ったのだろう。

 ファッションやメイクにおける「ギャル系」とは、単に「ケバい」と誤解されてしまうが、ニュアンスとしては「自己主張が強い」ものを指す。だが、昨今の日本経済を反映してか、過度に着飾ることはもはや流行らなくなった。ファッション誌業界はもろに影響を受けている。身近な存在であるところの読モ(読者モデル)の装いに憧れる、真似したいという感覚が廃れてきつつあるのだ。2014年に入って、「ガングロ」など渋谷のリアルを伝えてきた『egg』(大洋図書)、お水系など「姉ギャル」をターゲットにした『小悪魔ageha』(インフォレスト)と、一時代を築いた雑誌が次々と消えていった。通販サイトなどでうまくビジネス展開しているように見えた『BLENDA』(角川春樹事務所)までもが8月発売の号をもって休刊した。

 いまどきのギャル誌は、派手なギャル系だけでなく、「清楚系」を取り上げることが多い。もちろん、流行りを反映するのは雑誌の責務だが、それでは非ギャル系の雑誌と何が違うのか?ということになる。結果として、雑誌としての個性を打ち出しにくい。トレンドを取り入れているはずなのに売れない、という悪循環に陥る。ギャルとギャル誌がお互いにカルチャーを創造していった幸せな時代は、もはや帰ってこないのだろうか。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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